診療支援
治療

【2】凝固能亢進と血栓症リスク因子
諸岡 俊文
(山元記念病院・循環器内科部長)
野出 孝一
(佐賀大学教授・循環器内科)

 遺伝性凝固能異常症については,第8章「血栓症を生じる疾患」の各項()を参照されたい.ここでは,循環器内科医が知っておくべき凝固能亢進および血栓症リスクを招く病態について述べる.

外科的侵襲と移動能力障害

 外科的侵襲では血管を直接傷害したり,術後の移動能力低下により,下肢深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)を引き起こしやすくなる.危険因子は,高齢,整形外科手術,広範囲腹部手術,骨盤内手術などがあり,下肢深部静脈血栓症リスクが約20倍上昇し,DVT患者の約60%に移動能力の障害をもっている.

高齢

 50歳より若い年齢では,10,000人に1人の率でDVTの発生があるといわれているが,その後は10年単位でおよそ10倍ずつのリスク上昇に影響する.男性が女性より1.2倍も血栓症リスクが高いが,閉経前の女性のリスクは45歳未満の男性より高い.高齢になれば,移動能力

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