➊筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは,遺伝性の骨格筋疾患をいい,心筋障害を伴うと,心不全,伝導路障害,不整脈,突然死を引き起こし,生命予後にも影響する.
1)Duchenne(デュシェンヌ)型筋ジストロフィー,Becker(ベッカー)型筋ジストロフィー
いずれもジストロフィン遺伝子異常に起因する伴性劣性遺伝形式を示す.ジストロフィンは心筋構造および収縮機能を維持するために重要であり,Duchenne型ではジストロフィンが欠如しており,Becker型では変性ジストロフィンが生じて機能喪失している.このため筋細胞膜は脆弱で,筋線維の減少,壊死,線維化をきたし,拡張型心筋症のような心不全を引き起こす.Duchenne型は進行が速く,20~30歳代で死亡することが多く,Becker型の進行はやや緩徐であるため40~50歳代で死亡するケースが多い.Duchenne型は6歳頃に心筋障害が顕在化していき,10歳代で拡張型心筋症を呈する.下壁や側壁心筋が初期から障害されることが多い.
2)筋強直性ジストロフィー
常染色体優性遺伝形式で,筋収縮後の弛緩が緩徐で時間を要し,筋線維の減少,特に赤筋線維萎縮が特徴的である.全身症状として内分泌異常や白内障,認知機能障害,心機能障害をきたす.ミオトニンキナーゼ遺伝子の3'側非翻訳領域にあるシトシン・チミン・グアニン(CTG)の3塩基繰り返し(トリプレットリピート病,triplet repeat disease)配列が増加している.繰り返し数が多いほど重症で,世代を経るごとに繰り返し数が増加するため症状は重くなる.これを表現促進(anticipation)という.心血管表現系としては,特に伝導路組織を標的とした線維化,脂肪変性があり,初期症状として不整脈を生じることが多い.むしろ重症心不全を呈するのはDuchenne型と比較して少ない.
➋Friedrei
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