診療支援
治療

【3】唾液腺疾患
salivary gland disease
森山 雅文
(九州大学大学院歯学研究院・口腔顎顔面病態学)

▼分類

 唾液腺疾患には炎症,腫瘍,囊胞,発育異常などがあるが,本項ではそのなかでも頻度が高い炎症と腫瘍について述べる.

▼診断

 唾液腺は触知できる部位に存在することから,視診と触診による腫脹の性状・疼痛の有無,唾液の分泌量などの把握が重要である.また,画像検査(唾液腺造影,唾液腺シンチグラフィ,CT,MRI,超音波検査など)も有用であり,最終的には組織診断を行うが,大唾液腺の場合は侵襲を考慮して針生検を行うことが多い.

唾液腺の炎症

1)流涎症(ptyalism)

 唾液の分泌過多による真性流涎症と,嚥下障害により唾液が口から溢れる仮性流涎症がある.流出する唾液により口角炎や口唇周囲の皮膚炎を生じることがある.

2)口腔乾燥症(xerostomia)

 唾液が不足して生じる病態であり,原因別に分類すると,①唾液腺自体の機能障害によるもの,②神経性あるいは薬物性によるもの,③全身性疾患あるいは代謝性によるもの,の3つに大別される.治療は,唾液分泌促進薬であるムスカリン受容体作動薬が有効であるが,放射線性口腔乾燥症とSjögren(シェーグレン)症候群のみにしか保険適用ではない.その他には,漢方薬,植物アルカロイドなども用いられているが,即効性はない.

3)唾液腺炎(sialoadenitis)

 耳下腺や顎下腺が好発部位であり,細菌感染,ウイルス感染,異物,自己免疫性疾患,放射線照射によって生じる.そのなかでも唾石による閉塞性唾液腺炎(唾石症)が最も多い.治療としては,原因(唾石など)の除去や抗菌薬の投与が一般的である.

4)Sjögren症候群(Sjögren syndrome)

 唾液腺や涙腺などの外分泌腺が障害される自己免疫性疾患であり,口腔・眼乾燥を主徴とする.唾液流出の遅延により腺管内に逆行性の細菌感染が起こり,反復性の耳下腺炎を生じることもある.病態の詳細は第13章「シェーグレン症

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