疾患を疑うポイント
●主に食後にみられる胸やけや呑酸.
●前屈,臥位で増悪.
●円背のある高齢者や肥満者.
学びのポイント
●近年,患者数が増加しており,食道裂孔ヘルニア,肥満,高脂肪食などが原因となる.
●胸やけや呑酸などの定型的な症状以外にも胸痛や咽喉頭症状などがみられる.
●酸分泌抑制薬の投与にもかかわらず症状改善がない場合は他疾患との鑑別が重要となる.
▼定義
胃酸を中心とした胃内容物が食道へ逆流することにより胸やけや呑酸,胸痛などの不快な症状や合併症をきたすもの.
▼病態
➊下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)の機能不全
過食や高脂肪食による一過性LES弛緩頻度の上昇.食道裂孔ヘルニア(滑脱型)や薬剤によるLES圧低下.肥満,妊娠,円背などによる腹圧上昇など.
➋胃酸分泌過多〔Helicobacter pylori(H. pylori)〕
未感染・除菌後,高脂肪・高蛋白食など.
➌食道クリアランス不全
Sjögren(シェーグレン)症候群などによる唾液分泌障害や強皮症などによる食道運動障害など.
▼疫学
罹患率は欧米で10~40%,日本では約10~20%と推定される.H. pylori感染率の低下,食生活の欧米化,高齢化などに伴い日本でも増加傾向にある.
▼分類
➊逆流性食道炎(びらん性GERD)
内視鏡検査で食道粘膜にびらんや潰瘍などの粘膜傷害(mucosal break)を認めるもの.内視鏡的重症度分類としてロサンゼルス分類が用いられ,粘膜傷害の広がりの程度によって軽症型(Grade A,B),重症型(Grade C,D)に分けられる.
➋非びらん性胃食道逆流症(non-erosive GERD:NERD)
胸やけ・呑酸などの自覚症状は存在するが,粘膜傷害を認めないもの.改訂ロサンゼルス分類ではGrade N,Mに分けられる(図4-7図).
▼診断
症