▼定義
境界明瞭な良性上皮性病変で,腺管構造が主体の上皮内非浸潤性腫瘍である.
▼分類
腸型と胃型があることがわかり2010年のWHO分類にも記されている.
➊腸型
組織は小腸型の高円柱細胞からなる大きさの揃った管状腺管の密な増殖がみられる.核は細長く,基底膜側の配列を示す.
➋胃型
幽門腺腺腫ともよばれ,組織は淡明あるいは好酸性の細胞質と小型円形核を有する立方細胞からなる大小の管状腺管が密に増殖する.頸部粘液細胞~幽門腺細胞への分化を示す細胞が主体をなす.
▼病態
非腫瘍性の過形成性ポリープ,胃底腺ポリープと並んで胃にみられる良性ポリープである.一方で腺腫は腫瘍性ポリープであり,真の癌化率は不明であるが,前癌病変ともとらえておく必要がある.
胃型腺腫に特徴的な遺伝子異常としてGNAS/KRAS変異がある.
▼診断
内視鏡検査では腸型腺腫は周囲に比べやや褪色調から同色調の扁平な隆起病変として認められる(図4-38図).表面隆起型(0-Ⅱa型)分化型胃癌との鑑別が重要であり,病変サイズ,色調,表面性状などから鑑別する.腸型腺腫と分化型胃癌との鑑別点を表4-5図に示した.
胃型腺腫は胃上部に多く,内視鏡所見は半球状ないし結節状の広基性隆起病変で腸型腺腫より丈の高い傾向がある.色調は周囲と同色調のものが多い(図4-39図).
いずれも胃生検組織診断では異型性のある増殖腺管からなり,Group 3と分類される.
▼治療
良性病変であり,生検でGroup 3の場合には6~12か月ごとの内視鏡的経過観察が基本と考える.胃腺腫に対するHelicobacter pylori除菌の影響についてはいまだ統一した見解はないが,陽性例では,まずは除菌して経過観察を行うことも治療の選択肢の1つと考える.経過観察中に癌化する病変,生検でGroup 3であっても内視鏡切除をしてみると分化型癌である場合も存在するので