疾患を疑うポイント
●多くは無症状で,内視鏡検査やX線検査などで発見される胃壁内病変.
●進行すると吐血や閉塞症状を呈する.
学びのポイント
●胃の粘膜下腫瘍(SMT)は日常臨床ではしばしば遭遇する.
●多くは2cm以下の良性疾患で経過観察となる.
●胃SMTのうち症状を呈するもの,5cm以上の大型のもの,GISTなどは治療の対象となる.
▼定義
粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)は「粘膜より深部に存在する壁内病変により粘膜が挙上された隆起の総称」と定義されている.つまり,粘膜下層の腫瘍性病変ではなく,粘膜より下にある腫瘍様病変全体を指す.ゆえに,胃のSMTには異所性に迷入した膵組織である異所性膵(迷入膵)や炎症性の炎症性線維性ポリープ,上皮性の神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET,いわゆる胃カルチノイド)なども含まれる.
▼病態
上皮性腫瘍と異なり病変の主座が粘膜下に存在するため多くは正常の粘膜で覆われている.病変部は周囲の正常粘膜と同様の粘膜に覆われ,半球状に突出した形態が多い.巨大化し血流障害などで壊死を伴うと潰瘍を形成したり,炎症反応を起こす.
粘膜より深部にある組織が腫瘍化した病変や炎症性の腫瘤など組織像は多彩である.腫瘍性病変では,間葉系組織であれば消化管間葉性腫瘍(gastro-intestinal stromal tumor:GIST)や平滑筋腫,神経鞘腫,リンパ組織ならリンパ腫,脂肪であれば脂肪腫などが挙げられる.
▼疫学
胃においてはGISTや平滑筋腫などが多く,異所性膵(迷入膵),脂肪腫やNETなどがこれに続く.
▼分類
➊組織による分類
粘膜深部の組織の腫瘍化や炎症性の腫瘍様病変など多彩な組織を呈する.
1)GIST(消化管間葉性腫瘍)
消化管のペースメーカ細胞であるCajal(カハール)介在細胞を由来とした腫瘍.全消化管に発