診療支援
治療

(1)腸リンパ管拡張症
intestinal lymphangiectasia
大宮 直木
(藤田医科大学教授・消化管内科学)

疾患を疑うポイント

●小児~高齢者のいずれの年齢でも発症しうる.

●下痢などの消化器症状,四肢の浮腫,低蛋白血症,末梢血リンパ球減少,低γ-グロブリン血症がみられる.

学びのポイント

●蛋白漏出性胃腸症の主要な原因疾患の1つで,蛋白漏出は高度なことが多い.

●リンパ流の障害により腸管のリンパ管が拡張・破綻し,消化管内腔に乳びが漏出することで蛋白漏出をきたす.

●原発性腸リンパ管拡張症と続発性腸リンパ管拡張症に分類される.原発性の要因としてはリンパ管の先天的形態異常が,続発性の要因としては腸管リンパ流を障害するさまざまな器質的疾患がある.

●末梢血リンパ球減少,低γ-グロブリン血症による二次性免疫不全状態で予後不良なことがある.

▼定義

 小腸のリンパ流の障害により腸リンパ管の内圧上昇・拡張,消化管内腔への蛋白漏出が引き起こされ,その結果低蛋白血症をきたす疾患.

▼病態

 蛋白漏出性胃腸症の主要な原因疾患の1つで,蛋白漏出は高度なことが多い.病態としては,腸リンパ管の内圧上昇・拡張の結果,カイロミクロン,ビタミンDなどの脂溶性ビタミンの吸収障害,腸管リンパ球の体循環への再灌流障害,蛋白質・カイロミクロン・リンパ球を含んだリンパの腸管への多量漏出が引き起こされる.症状は浮腫,下痢,腹痛,腹部膨満,悪心・嘔吐,脂肪便,低カルシウム血性テタニー,消化管出血で,腸管の漿膜・腸間膜のリンパ流障害による乳び腹水,胸管のリンパ流障害による乳び胸水,四肢のリンパ浮腫(左右非対称性)を合併することもある.採血では低蛋白血症,リンパ球数の減少,免疫グロブリンの低下が認められるが,時に日和見感染症を合併し予後を悪化させる.形態的には小腸の多発する白色絨毛,顆粒状隆起,リンパ管腫とKerckring(ケルクリング)皺襞の肥厚が認められることが多い.

▼疫学

‍ 原発性腸リンパ管拡張症は主に小児および若年成人にみられ,男女の罹

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