▼定義
抗生物質(抗菌薬)は大腸炎を引き起こすことがある.抗菌薬関連大腸炎(antibiotic-associated colitis:AAC)〕は薬剤性大腸炎のなかで最も高頻度であり,Clostridioides difficile(C. difficile)腸炎(C. difficile infection:CDI)と抗菌薬関連出血性大腸炎(AAHC)の2病型がよく知られている.両病型ともに抗菌薬投与による菌交代現象に関連して発症するがその臨床的特徴は大きく異なる〔CDIは第11章の→を参照のこと.偽膜性大腸炎はCDIの一型である〕.AAHCはAACの一型であり,CDIが比較的緩徐に発症し左側結腸優位の病変分布を呈するのに対して,AAHCは抗菌薬内服開始後に血性下痢,腹痛,発熱を主訴に急性発症し,右側結腸優位に区域性の出血性大腸炎を呈する(表4-23図).
▼病態
AAHCは抗菌薬内服開始後に血性下痢(トマトジュース様),発熱を主訴に急性発症し,右半結腸優位に区域性の出血性大腸炎を呈する.菌交代現象によるKlebsiella oxytoca(グラム陰性桿菌)腸炎がAAHCの本態である.
▼疫学
若年から高齢の健常人において上気道炎などの軽症感染症に対する抗菌薬経口投与後に発生することが多い.合成ペニシリンの経口剤が圧倒的に多いが,セファロスポリン系やニューキノロン系も報告されている.大部分が単剤投与例である.
AAHCはペニシリン製剤の使用頻度の低下に伴い1980年代をピークに減少傾向にあるとされていたが,Helicobacter pylori(H. pylori)除菌療法にペニシリンが使用されることから,近年,H. pylori除菌療法に関連した報告が散見され,除菌治療に伴う本症の発生率は0.6%と報告されている.
▼診断
本症の診断は,従来の薬剤性腸炎の診断基準に準拠し,
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