診療支援
治療

6 腸結核
intestinal tuberculosis
斉藤 裕輔
(市立旭川病院・消化器病センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●盲腸の短縮,回盲弁の破壊,多発潰瘍瘢痕を伴う萎縮粘膜(萎縮瘢痕帯)を認める.

●回盲部に不整形潰瘍の横走配列や輪状・帯状潰瘍などを認める.

学びのポイント

●腸結核は肺結核とともに減少傾向にあったが,近年増加傾向で,腸管原発が多くなっている.

●回盲部が好発部位で,回盲弁の破壊・開大や萎縮瘢痕帯を認める.活動性潰瘍としては不整形潰瘍や輪状・帯状潰瘍などを認める.

●確定診断は糞便や生検組織の抗酸菌塗抹染色(Ziehl-Neelsen染色),PCR法による結核菌の証明,および病理組織上の乾酪性類上皮肉芽腫の検出である

▼定義

 腸結核は,結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を病原菌とする感染性腸炎である.小腸と大腸が罹患しうる.肺結核とともに減少傾向にあったが,最近増加傾向にある.

▼病態

 結核菌は嚥下され小腸に到達する.腸管のPeyer(パイエル)板などのM細胞を介して侵入し,マクロファージ内で増殖して結核結節を形成する.その中心部は乾酪壊死に陥り腸潰瘍が形成される.潰瘍は融合して帯状潰瘍や特徴的な輪状潰瘍となる.輪状・帯状潰瘍のために肉眼的には狭窄を形成する.治癒傾向が強く,多発する潰瘍瘢痕が認められることがあり,萎縮瘢痕帯とよばれる.

▼疫学

 罹患率は人口10万人対22.2で,欧米の3~4倍と先進国では罹患率は高い.結核菌感染症は,抗結核療法により減少したが,耐性菌の出現や集団感染などにより最近患者数は増加傾向にあり,決してまれな疾患ではない.肺結核の罹患率は年齢とともに上昇し,80歳以上で最高に達するが,青年も好発年齢である.近年,HIV感染症の増加とともに結核も増加が懸念されている.また医療従事者は一般と比べ発病率が2倍以上とされ注意を要する.

 本症は感染症法〔感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号

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