診療支援
治療

13 非特異性多発性小腸潰瘍症
chronic non-specific ulcers of the small intestine
江﨑 幹宏
(佐賀大学医学部附属病院・光学医療診療部診療教授)

疾患を疑うポイント

●多くは若年期に発症し,女性に多い.

●持続性潜性の消化管出血による貧血と低蛋白血症を特徴とする.

学びのポイント

●本症はまれであり,貧血と低蛋白血症を呈するが炎症所見を伴わないことが多いため,見逃されることが多い.

●本症がプロスタグランジン輸送蛋白の1つをコードするSLCO2A1遺伝子変異に起因する疾患であり,Crohn病やBehçet病などに用いられる内科治療は無効.

●中心静脈栄養法を用いた腸管安静により,潰瘍の閉鎖と貧血・低蛋白血症は改善するが,経口摂取を再開すると再発する.

▼定義

 病理学的に肉芽腫などの特異的炎症所見を伴わず,粘膜層または粘膜下層に限局する浅い潰瘍が小腸に多発するまれな疾患.

▼病態

 本症では同胞内発症例や常染色体劣性遺伝の形式で発症する症例が存在することから,遺伝性疾患である可能性が示唆されていた.近年,全エクソーム解析により本症はプロスタグランジン輸送蛋白の1つをコードするSLCO2A1遺伝子の変異による機能喪失に基づく常染色体劣性遺伝病であることが明らかとなった.これにより,本症を“chronic enteropathy associated with SLCO2A1 gene”(CEAS)という新規呼称に変更することが提唱された.

‍ SLCO2A1遺伝子は,ばち指,骨膜性骨肥厚,皮膚肥厚性変化を三徴とする肥厚性皮膚骨膜症の原因遺伝子としても知られている.CEASは女性に多くみられるのに対し,肥厚性皮膚骨膜症は男性に多いことから,CEASの病態には性染色体や性関連ホルモンなどほかの修飾因子が関与する可能性が示唆されている.

▼疫学

 2013年の厚生労働科学研究費補助金事業「腸管希少難病群の疫学,病態,診断,治療の相同性と相違性から見た包括的研究」(日比班)におけるアンケート調査では,有病者は150~200例程度と推測されている.

▼診断

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