診療支援
治療

5 大腸癌
colorectal cancer
田中 信治
(広島大学大学院教授・内視鏡医学)

▼定義

 大腸癌とは,大腸粘膜上皮から発生した悪性腫瘍である.大腸は,盲腸,結腸,直腸S状部,直腸から構成されるが,虫垂,肛門管までを含めて取り扱う.

▼病態

散発性大腸癌

 大腸癌の大部分は非遺伝性であり,環境因子の曝露が主因とされる.大腸粘膜上皮に遺伝子変異が蓄積して発生する.

1)adenoma-carcinoma sequence

 良性腫瘍である腺腫から発癌する経路.主として隆起型(ポリープ)病変からの進展経路である.APCK-rasp53などさまざまな遺伝子変異が関与する.

2)de novo発癌

 前癌病変を介さず,正常粘膜から直接癌が発生する発癌機序.主として平坦陥凹型病変からの進展経路であるが,隆起型のde novo癌も存在する.平坦陥凹型病変ではK-ras変異が関与しないという特徴がある.

3)serrated neoplasia pathway

 過形成性ポリープやsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)などの鋸歯状病変を母地とする発癌機序.近位大腸に好発し,BRAF変異,CpG island methylator phenotype(CIMP),MSI(microsatellite instability)などの特徴的な遺伝子異常を伴う.

4)炎症性発癌

 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)の長期経過例などの慢性炎症を母地として発生する経路で,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)のみでなくCrohn(クローン)病も高発癌状態である.UCでは10年以上の経過例,全大腸炎型に合併しやすく,びまん性浸潤型や低分化型腺癌,粘液癌が比較的多くみられる.周辺には,前癌病変である異型腺管(dysplasia)を伴う.前癌病変のdysplasiaの段階ですでにp53遺伝子異常が生じる.C

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?