疾患を疑うポイント
●中年以降の女性に好発する原因不明の慢性活動性肝炎.
●自己抗体陽性とIgG高値を認める.
学びのポイント
●なんらかの機序により自己の肝細胞に対する免疫学的寛容が破綻し,自己免疫反応によって生じる疾患である.
●遺伝的素因として日本ではHLA-DR4との相関がある.
●トランスアミナーゼの上昇,IgG高値,抗核抗体や抗平滑筋抗体の陽性を認める.
●門脈域の線維性拡大とリンパ球,形質細胞の浸潤を伴うinterface hepatitis所見と肝細胞ロゼット形成を認める.
●治療の基本は副腎皮質ステロイドによる薬物療法である.
▼定義
免疫系の異常により自己の肝細胞が障害され,慢性,進行性に肝炎をきたす原因不明の疾患である.
▼病態
詳細な病態は明らかとはなっていない.遺伝的素因としてわが国の例ではHLA-DR4との相関がある.発症誘因として先行する感染症や薬剤服用との関連が示唆されており,ウイルス感染や薬物代謝産物による自己成分の修飾,分子相同性などが発症に関与する可能性がある.肝内に浸潤するリンパ球はT細胞が主体であり,自己反応性T細胞の活性化と免疫制御性T細胞の細胞性免疫異常が本症の肝細胞障害の主因と考えられている.
▼疫学
わが国の推定患者数は約1万人程度,慢性肝炎の約2%を占めるとされる.男女比は1:6,発症年齢は中年以降が多い.近年,男性患者の割合が増加し,高齢化傾向があることが示されている.
▼分類
自己抗体により1型と2型に分類される.1型は抗核抗体や抗平滑筋抗体が陽性で,わが国の大半を占める.2型は抗肝腎ミクロソーム(LKM)-1抗体陽性となる.
発症には急性と慢性のいずれも存在するが,急性肝炎様に発症する例では,慢性の経過中に急性増悪する急性増悪期と急性肝炎像を示す急性肝炎期の2つの病態が存在する.
▼診断
診断の手順を図5-15図に示す.AIHの診断においては
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