診療支援
治療

2 肝細胞腺腫
hepatocellular adenoma
阪森 亮太郎
(大阪大学大学院学内講師・消化器内科学)
竹原 徹郎
(大阪大学大学院教授・消化器内科学)

▼概念・病理

 肝細胞由来の良性肝腫瘍であり,非硬変肝に発生し,20~40歳代の若年女性に好発し,経口避妊薬の長期服用と関連することがある.またⅠ型糖原病の約50%,Ⅲ型糖原病の約25%に肝細胞腺腫が発生する.わが国での正確な発生頻度は不明であるが,欧米での発生頻度は人口10万人に対して年間3~4人程度であり,原発性肝腫瘍の0.6%とされ,比較的まれである.肝細胞腺腫は,境界明瞭な充実性腫瘍で線維性被膜を伴うことがあり,しばしば腫瘍内に部分的に出血壊死を伴う.組織学的には異型に乏しい核とグリコーゲンに富む明調な胞体をもつ腫瘍細胞が,索状,敷石状に配列し,腫瘍内には門脈や胆管は存在しない.

▼検査所見・診断

 無症状であることが多いが,巨大な肝細胞腺腫の場合,上腹部の不快感,圧迫感などの症状を認める.腫瘍破裂や腫瘍内出血を起こした場合は,突然の腹痛をきたすことがある.巨大な肝細胞腺腫や多発する肝細胞腺腫では悪性化の報告もあり,また肝細胞癌との鑑別が困難となることが多い.造影CTでは,多血性腫瘍である肝細胞腺腫は早期濃染像を呈し,徐々に等吸収またはやや低吸収域となり,限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH),肝細胞癌と類似の造影パターンを示すが,門脈相および後期相での欠損像(低吸収域の程度)は肝細胞癌に比べ弱く,また肝細胞癌の後期相における腫瘍周囲がリング様に高吸収域となる像(コロナサイン)は認めない.MRIではT1強調画像で低信号から高信号までさまざまな信号を示し,T2強調画像で等~高信号を示す.また出血・壊死などの有無により不均一でさまざまな信号を認めるが,造影MRIでは造影早期に濃染像を認め,門脈相,後期相では造影効果を認めない.ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)による造影MRIでは,造影CTと同様の造影パターンを示し,肝

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