▼定義
ビリルビン代謝の先天的異常により起こる抱合型高ビリルビン血症であり,肝内外の胆管には異常がなく,肝障害を伴わない.ビリルビンの肝細胞膜輸送障害により黄疸を生じる(表5-19図).
▼病態・疫学
Dubin-Johnson(デュビン-ジョンソン:DJ)症候群は日本人では30万人に1人程度と考えられている.常染色体劣性遺伝で,肝細胞毛細胆管膜上に存在するMRP2の遺伝子異常が本態である.MRPはATP依存性に有機アニオンやビリルビンを胆汁中に能動輸送しているため,本症候群では抱合型ビリルビンの胆汁排泄の障害が生じて細胞内貯留が起こるが,類洞側膜上にMRP3の発現が誘導されてビリルビンの血中への逆流をきたすようになる.
▼診断
抱合型高ビリルビン血症がみられるのみで,ほかの肝機能検査値に異常はみられない.血清総ビリルビンは2~5mg/dL程度のことが多い.インドシアニン・グリーン薬薬(indocyanine green:ICG)色素排泄試験では異常はみられない.ブロムスルファレイン(bromsulphalein:BSP)色素排泄試験では,抱合型BSPの排泄遅延のため,負荷後45分までは正常であるが,60~90分以降に血中BSPの再上昇がみられる.この現象はDJ症候群に特異的なため診断に有用であるが,わが国では試薬の販売が中止になっており,同試験の実施は困難である.
また,本症候群ではポルフィリン代謝異常がみられる.尿中総コプロポルフィリン(CP)量は正常だが,健常者でⅢ型>Ⅰ型であるのに対して,本症ではⅠ型が大部分を占める.
腹腔鏡検査で肝は肉眼的に黒色肝を呈し,組織学的には肝細胞内にDubin-Johnson顆粒とよばれるリポフスチン顆粒がみられる.排泄性胆囊造影検査では,胆囊の描出が不良または遅延を示す.
▼治療・予後
予後良好で,特別な治療を必要としない.MRP2にて胆