診療支援
治療

3 自己免疫性膵炎
autoimmune pancreatitis
川 茂幸
(松本歯科大学特任教授・内科)

疾患を疑うポイント

●高齢,男性に好発し,通常の膵炎とは異なり強度の腹痛を呈することはない.

●膵腫大,主膵管不整狭細像が特徴的で,閉塞性黄疸を呈することが多く,膵癌と臨床像が類似する.

●血中IgG4の上昇を高率に認める.

●病変組織にリンパ球・形質細胞,IgG4陽性形質細胞の浸潤を認める.

●涙腺・唾液腺炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など全身に合併症を認める(IgG4関連疾患).

学びのポイント

●自己免疫性膵炎は膵腫大,主膵管不整狭細像,血中IgG4上昇,組織にIgG4陽性形質細胞浸潤を呈する特殊な膵炎で自己免疫性疾患と考えられている.

●臨床的には高齢発症,膵腫大,閉塞性黄疸を呈することから膵癌と臨床像が類似する.本症はステロイド治療が奏効するので鑑別が重要である.

●自己免疫性膵炎はIgG4が関連する全身性疾患,IgG4関連疾患(IgG4-related disease)の膵病変と考えられている.

▼定義

‍ 血中IgG4上昇膵腫大主膵管不整狭細像を特徴的に認め,著明なリンパ球,形質細胞浸潤と線維化の病理組織像を呈する膵炎(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis:LPSP)で,IgG4関連疾患の膵病変と考えられている.

▼病態

 膵病変組織にはリンパ球,形質細胞などの炎症性細胞浸潤を著明に認め,膵は腫大し,膵管は周囲より圧排されて特徴的な不整狭細像を呈する(図5-53).多くは膵頭部に病変を認め,膵内胆管を狭窄して閉塞性黄疸を呈する.病変は膵全体に及ぶ場合と限局性腫瘤を呈することがあるが,特に限局性腫瘤を呈する場合には膵癌と鑑別が必要となる.血中免疫グロブリンの上昇,各種自己抗体が陽性,病変組織に著明なリンパ球・形質細胞浸潤,ステロイド治療が奏効することより,自己免疫性疾患と考えられている.本症では血中IgG4の上昇,膵病変組織へのIgG4

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?