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治療

(1)膵管内乳頭粘液性腫瘍
intraductal papillary mucinous neoplasm of pancreas(IPMN)
入澤 篤志
(獨協医科大学主任教授・内科学(消化器))

▼定義

‍ 膵管内に発生し,乳頭状に発育し多量の粘液を産生する上皮性腫瘍である.病変の主座により,主膵管型,分枝膵管型,混合型に分かれる(図5-54a,b,c)

▼病態

 IPMNが産生する粘液により,主膵管および分枝膵管は肉眼的に拡張する.拡張した膵管内面に種々の乳頭状構造および異型を呈する腫瘍性上皮の増生がみられる.腺腫と腺癌があり,腺腫の一部の症例では上皮内癌を経て浸潤癌となる.

 主膵管型では数珠状のびまん性拡張,十二指腸乳頭の開大および粘液の排出を呈する場合がある.また,分枝膵管型では粘液が分枝膵管に貯留して囊胞状を呈するため囊胞性腫瘍とみなされる.腺癌に進行した場合でも通常型膵癌に比して緩徐に発育するが,徐々に膵管内から周囲実質に浸潤し,粘液癌や管状腺癌の状態を呈する.

 粘液の多量産生により膵液のうっ滞をきたし,急性膵炎や膵実質の萎縮を伴う閉塞性慢性膵炎を引き起こすこともある.また,粘液による囊胞内圧上昇や癌の浸潤により,胃,十二指腸,胆管などに穿破することがある.

‍ IPMNは5%前後で通常型膵癌を合併する.また,20~30%に他臓器癌の合併があるとされる.

▼疫学

 囊胞性膵腫瘍のなかでは最も多い.高齢男性に多いが,近年の画像診断の進歩に伴い女性の症例も増えている.膵頭部に多いが,多中心性に発生した多発例もみられる.正確な発生頻度は不明であるが,おおむね10,000人あたり5人ほどと推測されている.

▼分類

 形態分類としては,主膵管型は拡張した主膵管径が5mm以上,分枝膵管型は主膵管径が5mm未満で主膵管と交通する分枝膵管の拡張した径が5mm以上,上記2つの特徴を併せもつものが混合型である.

 病理学的には,上皮の異型の程度および浸潤の有無により,腺腫,非浸潤性腺癌,浸潤性腺癌の3つに分類される.また,腫瘍上皮の組織学的構築と細胞形態の特徴から,胃腺窩上皮あるいは幽門腺

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