診療支援
治療

(2)粘液性囊胞性腫瘍
mucinous cystic neoplasm(MCN)
入澤 篤志
(獨協医科大学主任教授・内科学(消化器))

▼定義

 囊胞内面が種々の異型を伴う粘液性高円柱上皮で被覆される粘液性囊胞性腫瘍で,特徴的な卵巣様間質(ovarian-type stroma:OS)を有する

▼病態

‍ 中高年女性の膵尾部に好発する(その頻度は95%以上とされる).

 通常は,厚い線維性被膜をもつ球形の単-多房の囊胞性腫瘍である(内腔に凸の囊胞内囊胞が独立した腔として存在する場合に多房性を呈する:cyst-in-cyst appearance).また,時に被膜内に小囊胞を認めることがある.内容は粘液性あるいは粘血性であり,内面は平滑,顆粒状,あるいは出血性びらん性である.IPMNと異なり,通常は主膵管との交通は認めない(図5-54d)

 病理学的には,囊胞壁は腫瘍性上皮と上皮下に小血管に富む紡錘形細胞からなるOSといった2つの要素で構成されている.

 囊胞径が小さい場合は症状を呈することはほとんどないが,増大することにより周囲膵管を圧排することで急性膵炎を発症することがある.

‍ MCNは腺腫から腺癌へと悪性化し,悪性化すると上皮内癌から浸潤癌へと進行する.

▼疫学

 発生頻度は不明である.OSをもつ腫瘍であり基本的には女性に発生するが,きわめてまれに男性例での報告がある.あらゆる成人年齢に発見されるが,おおむね閉経前後の年齢層に多い.悪性化する頻度は6~36%と報告されている.

▼分類

 病理学的には,上皮の異型の程度および浸潤の有無により,腺腫,非浸潤性腺癌,浸潤性腺癌の3つに分類される.

▼診断

 症状としては,腫瘍がある程度増大することで腹痛や背部痛を認めることがあるが,非特異的である.基本的には画像で診断する(図5-57).腹部超音波検査(US)やCT,MRI(MRCP)などで,女性の膵体尾部に球形の厚い被膜をもった囊胞が観察された場合はMCNを考慮する.被膜はMRI(T1/T2強調)で低信号帯として明瞭に観察さ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?