▼概念
糖尿病は,インスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群である.この疾患群の共通の特徴はインスリン効果の不足であり,それにより糖,脂質,蛋白質を含むほとんどすべての代謝系に異常をきたす.本疾患群でインスリン効果が不足する機序には,インスリンの供給不全(絶対的ないし相対的)とインスリンが作用する臓器(細胞)におけるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)とがある.
糖尿病の原因は多様であり,その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する.インスリン供給不全は,膵Langerhans(ランゲルハンス)島β細胞の量が破壊などによって減少した場合や,膵β細胞自体に内在する機能不全によって起こる.前者が比較的純粋に起こる場合と,膵β細胞のインスリン分泌機構の不全にインスリン感受性の低下が加わって起こる場合などがある.いずれの場合でも,機能的膵β細胞量は減少しており,臓器