診療支援
治療

4 糖尿病大血管症
diabetic macroangiopathy
森野 勝太郎
(滋賀医科大学学内講師・糖尿病内分泌・腎臓内科)
前川 聡
(滋賀医科大学教授・糖尿病内分泌・腎臓内科)

疾患を疑うポイント

●糖尿病の合併症として,動脈硬化性疾患を常に意識することが重要.

学びのポイント

●糖尿病合併症のメカニズムとして高血糖の関与は疑う余地がないが,動脈硬化症である大血管症では,高血糖以外の危険因子(高血圧,脂質異常症,喫煙,慢性腎臓病など)に加えて,糖尿病罹病期間についても考慮することが臨床上重要.

▼定義

 糖尿病患者では心筋梗塞,脳梗塞,末梢動脈疾患などの心血管イベントが発症しやすく,その背景には糖尿病による動脈硬化症促進効果が存在する.

▼病態

高血糖によるリスク増加

 血管壁蛋白質の酸化反応による架橋形成,AGE修飾蛋白質や酸化ストレスによる内皮機能障害,酸化LDLによる泡沫細胞形成などが高血糖のため生じる.境界型糖尿病でも頸動脈中膜肥厚を認めていることから,急激な血糖変動(グルコーススパイク)が酸化ストレスを亢進させていると考えられている.

インスリン抵抗性によるリスク増加

 糖尿病患者では,肝臓からのVLDL産生増加,脂肪組織からの遊離脂肪酸産生増加とLPL活性低下により異化が障害されTG-richレムナントリポ蛋白が増加する.この現象にはHDL低下やsmall dense LDL産生を伴う.このTG-richレムナントリポ蛋白やsmall dense LDLは泡沫細胞形成を促進する.

高インスリン血症によるリスク増加

 インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症は,腎尿細管でのNa再吸収増加および交感神経活性化やレニン・アルドステロン系活性化などによる血圧上昇,さらに血管平滑筋細胞増殖などを介して動脈硬化に働く可能性がある.インスリン抵抗性状態では血管内皮機能障害がみられ,特に内皮型NO合成酵素(eNOS)活性低下に基づく血管弛緩反応障害が注目されている.

メタボリックシンドローム

 内臓脂肪蓄積に伴ったインスリン抵抗性の場合は,メタボリックシンドロームを呈し,高

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