疾患を疑うポイント
●乳糖を摂取後に腹痛,下痢,鼓腸,腹部膨満などの消化器症状を呈する.
●人種による差が大きい.
学びのポイント
●乳糖分解酵素障害症(乳糖不耐症)は,乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性低下によって生じる.
●ラクターゼの活性が低下しているため乳糖を消化吸収できず,消化器症状をきたす.
●乳糖除去食によって,カルシウムとビタミンDの摂取量が不足することがある.
▼定義
乳糖摂取後に腹痛,下痢,鼓腸,腹部膨満などの症状を呈する症候群.ラクターゼの活性が低下しているために,乳糖を分解,吸収することができず乳糖の消化吸収障害をきたす.
▼病態
乳糖はミルクや乳製品に含まれる二糖類であり,小腸粘膜にある乳糖分解酵素によって,単糖類であるブドウ糖とガラクトースに分解され吸収される.乳糖不耐症では,先天性あるいは二次性にラクターゼの活性が低下しているため,乳糖が腸内腔に残存して水分が管腔内に流出し,浸透圧性の下痢が生じる.さらに未消化の乳糖は腸内で細菌の栄養源となり,大腸の腸内細菌による発酵やガスの産生が生じて,腹痛,腹部膨満などの症状が出現する.乳糖不耐症は乳糖摂取によって症状が引き起こされるため,しばしば乳製品の摂取を避ける要因となる.このため,乳糖除去食に起因するカルシウムとビタミンDの摂取不足から,骨密度低下など健康上の問題が生じることがある.
▼疫学
ラクターゼ活性は胎児期の比較的遅い時期に現れ,3歳をすぎる頃に低下し始める.人種による差が大きく,北欧で7~20%,アフリカで65~75%,アジアで90%が成人においてラクターゼ活性が低下する.
▼分類
先天性のラクターゼ欠損症はまれであり,わが国の正確な頻度は不明である.生後まもなく乳糖を含む母乳やミルクを摂取したあとに著しい下痢や体重増加不良などが生じる.成人型ラクターゼ欠損症は,乳児期にはラクターゼは正常であるが,離乳後にその
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