診療支援
治療

【2】肥満症とメタボリックシンドローム
obesity disease and metabolic syndrome
庄嶋 伸浩
(東京大学大学院特任准教授・糖尿病・代謝内科)
山内 敏正
(東京大学大学院教授・糖尿病・代謝内科)

疾患を疑うポイント

●BMI[body mass index:体重(kg)/〔身長(m)〕2]が25kg/m2以上を肥満と判定する.

●ウエスト周囲長により,内臓脂肪蓄積を評価する.

学びのポイント

●肥満は,インスリン抵抗性に伴い糖代謝を悪化させ,糖尿病のリスクを約3~7倍に上昇させる.

●肥満は,糖尿病,高血圧,脂質異常の合併を高めることから,メタボリックシンドロームの原因となり,心筋梗塞や脳梗塞などの大血管合併症の発症および進展のリスクとなる.

●BMIが25kg/m2以上で35kg/m2未満の肥満症では,3%の体重減少でも,耐糖能異常を含めて健康障害の改善が包括的に得られることが明らかとなった.

▼定義

 メタボリックシンドロームは,心血管疾患の危険因子が集積した病態である.肥満症は,肥満に伴う個々の健康障害を,減量することによって改善する疾患概念である.肥満症は,肥満に伴う心血管疾患を含めてより多くの健康障害を念頭においている.

▼病態

 脂肪組織は,エネルギーの貯蔵庫であると同時にアディポサイトカインとよばれる生理活性物質を分泌する内分泌臓器である.肥満者の脂肪組織においては,炎症性サイトカインの産生や免疫担当細胞の浸潤が認められ,代謝異常を引き起こす.

▼疫学

 わが国のBMIが25kg/m2以上の肥満の割合は男性では3割弱であり,女性で2割を超えるとされる.米国ではBMIが30kg/m2以上の割合が3割を超える.日本人は,軽度の肥満であっても,2型糖尿病の有病率は欧米と同程度であり,生活習慣病を発症しやすい.

▼分類

 肥満はBMIにより分類される(表6-37).BMIが25kg/m2以上を肥満と判定する.BMIが35kg/m2以上の肥満を高度肥満と判定する.

▼診断

 BMIが25kg/m2以上で肥満と判定されたもののうち,二次性肥満を除外して,①肥満に起因ないし関連し,減量を要する健

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