診療支援
治療

(5)ADA欠損症,PNP欠損症
ADA deficiency,PNP deficiency
植木 将弘
(北海道大学病院・小児科)
有賀 正
(北海道大学名誉教授)

疾患を疑うポイント

●ADA欠損症は,リンパ球が著減しているT-B-NK-タイプのSCIDが疑われる症例.PNP欠損症は進行するリンパ球減少と神経症状を示し,尿酸値が低い症例.

▼定義

 アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)欠損症とプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(purine nucleoside phosphorylase:PNP)欠損症は,プリン代謝にかかわる酵素欠損として先天性代謝異常症にも分類される原発性免疫不全症である.赤血球の酵素スクリーニングをした際,それぞれの欠損症に免疫不全症が合併することをGiblettらが偶然に発見したことが両疾患確立の端緒である.

▼病態

 プリン代謝におけるADAとPNPの役割を図6-32に示した.ADA欠損の場合は蓄積するd-ATPが,PNP欠損の場合は蓄積するd-GTPが主に細胞毒性を示し,特にリンパ球系細胞で感受性が強いことが病態の基盤である.ADA欠損症では免疫不全が重篤で,大半は重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency:SCID)となる.SCIDほど重症でない場合には,自己免疫疾患も合併する.PNP欠損症の免疫不全はADA欠損症よりは軽度.進行性のT細胞系障害が主で,多様な神経系の合併症が特徴である.自己免疫疾患も合併する.いずれの疾患も常染色体劣性(潜性)遺伝疾患である.

▼疫学

 SCIDは40,000~75,000人に1人の頻度で出生するが,そのうちの約15%がADA欠損症とされる.PNP欠損症の頻度はもっと少ない.欧米ではT-cell receptor excision circles(TRECs)の定量による新生児のSCIDスクリーニングが開始されており,両疾患の正確な頻度が判明するであろう.

▼分類

 変異によって残存酵素活性が異なり,それぞれ重

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