診療支援
治療

(1)下垂体腺腫
pituitary adenoma
山田 正三
(森山脳神経センター病院・間脳下垂体センター・センター長)

▼定義

 下垂体腺腫は最も頻度の高い(70~80%)トルコ鞍部の良性腫瘍で,下垂体前葉の細胞から発生する.腫瘍からのホルモン産生の観点から機能性(ホルモン産生)腺腫非機能性(ホルモン非産生)腺腫に大別される.

▼病態

 ホルモン産生腺腫の場合にはそれぞれ過剰に産生されたホルモンによる特有の症状(先端巨大症など)が出現する.同時に腫瘍が大きい場合には周囲組織の圧迫による機能障害(下垂体機能低下症,視交叉の圧迫による視機能の障害,頭痛など)が生じる.非機能性腺腫もホルモンの合成,分泌を全く欠くのではなく,その多くは生物学的活性をもたないゴナドトロピン(LH/FSH)を産生・分泌している.

▼疫学

 下垂体腺腫は原発性脳腫瘍中3番目に多い腫瘍で,18%を占める.非機能性腺腫が45%,機能性腺腫が55%(PRL産生腺腫26%,GH産生腺腫22%,ACTH産生腺腫6%,その他の機能性腺腫2%).青壮年期から老年期に好発し,小児例はまれ(下垂体腺腫の2~3%)である.小児期~若年者では機能性腺腫が,高齢者では非機能性腺腫が多くみられる.性差ではPRLおよびACTH産生腺腫は女性に多く,GH産生腺腫や非機能性腺腫では性差はない.

▼分類

 腺腫の大きさにより最大径10mm未満を微小腺腫(microadenoma),10mm以上を大型腺腫(macroadenoma)とよび,40mm以上のものを特に巨大腺腫(giant adenoma)とよぶ.さらに周辺組織へ浸潤性増殖を示すものを浸潤性腺腫(invasive adenoma)とよぶ.

▼病因

 下垂体腺腫は孤発性に発生するが,約5%の症例は遺伝性で家族内発生を認める.これらは多発性内分泌腺腫症1・4型やCarney(カーニー)複合体(Carney complex)のように下垂体腺腫のほか,多臓器に腫瘍を伴うものと,下垂体腺腫のみが同一家系内に発症する場合が

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