診療支援
治療

(2)頭蓋咽頭腫
craniopharyngioma
山田 正三
(森山脳神経センター病院・間脳下垂体センター・センター長)

▼定義

 頭蓋咽頭腫は胎生期頭蓋咽頭管の遺残から発生するWHO Grade Iの良性腫瘍.腫瘍は下垂体茎周囲に遺残した重層扁平上皮から発生する.

▼病態

 トルコ鞍の拡大を伴って下垂体腺腫同様の成長を呈するタイプ(鞍隔膜下型)と鞍上部に主座し,発育するタイプ(鞍隔膜上型)に大別できる(図7-12c,d).いずれも大きくなると視交叉を圧迫して視機能障害(両耳側半盲)や,下垂体茎・視床下部を障害して下垂体機能低下,高次機能障害(視床下部障害)を伴う.下垂体機能障害は,小児では低身長で気づかれることが多い.

▼疫学

 原発性脳腫瘍の3.5%を占める.中学生以下の小児期と,40~60歳代を中心とする成人期の二峰性に好発ピークを有する.わが国の小児脳腫瘍の5~10%を占める.

▼分類

 組織学的にはエナメル上皮腫型(adamantinomatous type)と,扁平上皮乳頭型(squamous papillary type)の2型に分類される.前者は小児例に多く,囊胞や石灰化を伴うことを特徴とし,後者は成人に多く,充実性腫瘍として成長し,囊胞や石灰化は認めにくい.

▼病因

 扁平上皮乳頭型では腫瘍の発生に関与するBRAFの遺伝子異常が,エナメル上皮腫型ではβ-カテニンの異常を伴う,CTNNB1の遺伝子異常が高率に認められる.

▼診断

 眼科的検査,内分泌的精査(場合によっては尿崩症の検査を加える)や,MRI・CTスキャン(骨・石灰化の評価に優れている)などによる腫瘍自体の評価を行う.小児例で頭痛,低身長および視力低下を主訴に,視床下部・下垂体系の内分泌障害を認め,トルコ鞍近傍に石灰化を伴う囊胞および充実性腫瘍を認める場合はまず頭蓋咽頭腫を考える.成人例では視機能障害,下垂体ホルモン分泌障害による症状を認め,画像で充実性あるいは囊胞性の鞍上部腫瘍を認める場合は本疾患を考慮する.約10~20%では鞍内から

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