診療支援
治療

9 ADH不適合分泌症候群
syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone(SIADH)
有馬 寛
(名古屋大学大学院教授・糖尿病・内分泌内科学)

疾患を疑うポイント

●低ナトリウム血症.

●尿中ナトリウムが20mEq/L以上.

●脱水を示唆する所見を認めない.

学びのポイント

●血清ナトリウム濃度が低下した状態においてもバソプレシンの抗利尿作用が持続し,結果として低ナトリウム血症を呈する疾患.

●腎臓における自由水の再吸収によっていったん体液量は増加するが,その後に代償性のナトリウム利尿が生じ,SIADHにおける体液量は正常範囲となる.

●治療の第一は水制限.

▼定義

 通常は血清ナトリウム濃度がわずかでも低下すると,抗利尿ホルモンであるバソプレシンの分泌はすみやかに低下し,その結果として水利尿が生じて血清ナトリウム濃度は正常範囲に戻る.これに対しSIADHは低ナトリウム血症にもかかわらずバソプレシンの抗利尿作用が持続している疾患.

▼病態

 SIADHではバソプレシンの抗利尿作用により腎臓からの自由水の吸収が増加して循環血液量がいったん増加するが,これ

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