診療支援
治療

1 単純性甲状腺腫
simple goiter
宮川 めぐみ
(宮川病院・内科部長)

疾患を疑うポイント

●思春期(成長期)の若い女性に多くみられ,甲状腺が軟らかく全体に腫大してくる.

▼定義・病態

 単純性甲状腺腫は甲状腺におけるホルモンの合成と分泌が絶対的あるいは相対的に不足した場合に起こる.不足の原因としては,ヨウ素摂取量の不足,ヨウ素の摂取や甲状腺ホルモン合成を妨げる医薬品〔アミオダロン,リチウム,ロダン酸(チオシアン酸ともよばれる),抗結核薬(パラアミノサリチル酸,PAS)など〕,甲状腺ホルモンの合成を抑制する物質を多く含有する食物(キャベツ,ブロッコリー,カリフラワー,カラシナ)の多食などが挙げられる.ヨウ素欠乏症は世界中の内陸部でみられる甲状腺腫の最も頻度の高い原因であり,地方性甲状腺腫とよばれる.日本ではヨウ素摂取が充足しているのでヨウ素欠乏よりもむしろヨウ素過剰によって甲状腺腫が生じる.先天性に甲状腺ホルモン合成障害をきたす病態(dyshormonogenetic goiter)のなかにはPendred(ペンドレッド)症候群〔本項のトピックス参照〕,サイログロブリン遺伝子異常症,甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase:TPO)遺伝子異常症,ナトリウム/ヨウ素シンポーター(Na/I- symporter:NIS)異常症などがあり,臨床的に甲状腺機能低下症をきたし甲状腺はびまん性に腫大してくることが多い.一方で,思春期,月経,妊娠などの際には甲状腺ホルモンの需要が増加するため相対的欠乏となりやすく10~30歳代の女性に発症しやすいと考えられる.甲状腺ホルモンが不足するとTSHの分泌が上昇し甲状腺細胞が増殖して甲状腺が腫大する.すなわち本症における甲状腺腫は代償性腫大でありこれによって血中甲状腺ホルモンも正常に保たれる.

▼疫学

 思春期(成長期)の女性に多い.

▼診断

 若い女性で甲状腺全体がびまん性に軟らかく腫大している場合に診断さ

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