疾患を疑うポイント
●高Ca血症で気づかれることが多い.尿路結石症や骨粗鬆症を契機に診断されることもある.
●閉経後女性に好発し,男女比は1:2程度である.若年発症では家族性や先天性の可能性を疑う.
学びのポイント
●PTHの自律的分泌による内分泌疾患であり,尿路結石症や骨折リスク上昇の原因となる.
●高Ca血症を契機として診断されることが多く,疾患特異的な症状を主訴とする患者は少ない.
●責任病巣である腫大副甲状腺の外科的摘除により尿路結石症の発作や骨折リスクの低減および骨密度の上昇が期待される.
▼定義
副甲状腺主細胞の腫瘍化や過形成による副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)の自律的な分泌を主な病態とする疾患である.
▼病態
原発性副甲状腺機能亢進症の病態は,PTHの自律的な分泌とその標的組織における作用過剰である.PTHは84個のアミノ酸からなるペプチドホルモンであり,PTH受容体1型(PTHR1)に結合し,その細胞内シグナルであるサイクリックAMPおよびイノシトール3リン酸の産生を高めることで特異的な作用を発現する.主な標的組織は骨と腎である.①骨:PTHは骨芽細胞に作用し,RANKリガンドの発現を介して破骨細胞の形成と活性化により骨吸収を促進する.②腎:PTHは腎遠位尿細管に作用し,CaチャネルのTRPV5によるCa再吸収を促進する.また,腎近位尿細管に作用し,NaPi2aによるリン再吸収を抑制し,重炭酸イオンの排泄を促進する.さらにビタミンDの1α水酸化酵素の発現を誘導し,活性型である1α,25水酸化ビタミンDの産生を増加させる.PTHの作用過剰により,高Ca血症,低P血症,代謝性アシドーシス,骨吸収の亢進が生じる.
高Ca血症による症状は,中枢神経や自律神経または腎への作用に起因する.具体的には,食欲低下,被刺激性の亢進(イライラ感),不眠や便秘
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/生理食塩液《生理食塩液》
- 治療薬マニュアル2024/ゾレドロン酸水和物《ゾメタ》
- 治療薬マニュアル2024/テリパラチド(遺伝子組換え)《フォルテオ》
- 臨床検査データブック 2023-2024/インタクト副甲状腺ホルモン〔intact-PTH〕 [保] 165点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/高感度副甲状腺ホルモン〔PTH-HS〕 [保] 165点(包)
- 今日の治療指針2023年版/副甲状腺機能亢進症
- 臨床検査データブック 2023-2024/尿中デオキシピリジノリン〔DPD,D-Pyr〕 [保] 191点(包)
- 今日の治療指針2023年版/無月経・乳汁漏出症候群
- 新臨床内科学 第10版/4 腫瘍性骨軟化症
- 新臨床内科学 第10版/1 副甲状腺機能亢進症に伴う神経障害
- 新臨床内科学 第10版/3 悪性腫瘍随伴高カルシウム血症
- 今日の診断指針 第8版/原発性副甲状腺機能亢進症
- 今日の診断指針 第8版/プロラクチノーマ