疾患を疑うポイント
●通常,成人発症
●倦怠感,消化器症状と色素沈着
●相対的リンパ球増多と好酸球増多
●血中コルチゾール低値と血中ACTH高値
学びのポイント
●本症は希少難病であるが,診断,加療されなければ生命の危機に直面する.
●疑うきっかけは体重減少,倦怠感,消化器症状などの自覚症状と色素沈着,好酸球増多,リンパ球増多などの所見である.
●内分泌学的には血中コルチゾール基礎値低値と血中ACTH高値,ACTH負荷に対する血中コルチゾールの無~低反応が診断のキーポイント.
●HCの一生の補充が必要.
●急性副腎不全症を予防するために,ストレス時やシックデイには数倍のHC服用が必要.
▼定義
原発性の慢性副腎皮質機能低下症(慢性副腎不全症)は,1855年,英国の内科医であるThomas Addisonにより初めて報告された疾患であることから,Addison(アジソン)病とよばれている.副腎皮質ステロイド合成酵素欠損症による先天性副腎皮質過形成症,先天性副腎低形成症,ACTH不応症などの先天性疾患でも原発性副腎不全症を呈するが,先天性のものは,通常,独立した疾患として取り扱う〔本章「先天性副腎皮質過形成症」の項(→)参照〕.Addison病は,一般に,後天性の原発性の慢性副腎不全症を指す.
▼病態
副腎皮質は3層構造よりなり,球状層からは鉱質コルチコイドのアルドステロンが,束状層から糖質コルチコイドのコルチゾールが,網状層から副腎アンドロゲンのデヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone:DHEA)とその硫酸塩であるデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)が分泌されている.Addison病では,副腎皮質のさまざまな障害(表7-42図)によって,コルチゾール,アルドステロン,副腎アンドロゲンの分泌が低下し,これらのホルモンの総合的な脱落症状を呈する.一方
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/7 先天性副腎皮質過形成症
- 新臨床内科学 第10版/3 甲状腺機能低下症
- 新臨床内科学 第10版/2 多腺性自己免疫症候群
- 治療薬マニュアル2024/ヒドロコルチゾン《コートリル》
- 臨床検査データブック 2023-2024/副腎皮質刺激ホルモン〔ACTH〕 [保] 189点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/CRH(CRF)負荷試験(コルチコトロピン放出ホルモン負荷試験) [保] 1,200点(包)
- 新臨床内科学 第10版/(1)副腎腺腫,副腎過形成(ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成)
- 今日の診断指針 第8版/下垂体機能低下症
- 今日の診断指針 第8版/Addison病
- 今日の診断指針 第8版/急性副腎不全