診療支援
治療

4 急性副腎不全
acute adrenal insufficiency
大月 道夫
(大阪大学大学院講師・内分泌・代謝内科学)

疾患を疑うポイント

●特異的な症候,検査所見がないため原因不明のショック,腹部症状,発熱などを認めた場合には本疾患を疑う必要がある.

学びのポイント

●内分泌緊急症として重要な病態である.原因不明のショック,腹部症状,発熱などを認めた場合には本疾患を疑うこと,また疑った場合には躊躇せず,ACTH,コルチゾール測定のための採血を行い,グルココルチコイドの投与を行うことがポイントである.

●本疾患の予防のため,慢性副腎不全患者はストレスを生じるさまざまな状況においてグルココルチコイド補充量の調整が必要であることを,患者および家族に教育する.また,まれな疾患である副腎不全によって加療中であることを明記した緊急カードを常に携帯してもらう.

▼定義

 グルコ(糖質)コルチコイドの絶対的または相対的欠乏が急激に起こることによりショックを呈し,グルココルチコイドの補充を行わないと致命的な状態となる病態である.副腎クリーゼ(adrenal crisis)と記載されることもあるが,同義である.

▼病態

 健常者におけるグルココルチコイド(コルチゾール)分泌量は平常時5~10mg/m2(20~30mg/日)であるが,ストレス時には最大300mg/日まで増加する.慢性副腎不全患者ではストレスに応じたグルココルチコイド分泌反応が欠如しているため,急激にグルココルチコイドの絶対的または相対的欠乏が起こり,副腎カテコールアミンの合成の低下,血管のカテコールアミン感受性低下,血管拡張物質抑制低下,ミネラロコルチコイド欠乏によるナトリウム喪失や循環血漿量の減少によりショックをきたす.また急性副腎不全の原因となった疾患(胃腸炎による嘔吐,下痢)による循環血漿量の減少も影響する(図7-32)

 原因としては,慢性副腎不全患者(未診断,未治療例も含む)に感染,外傷,手術などのストレスが加わり,急激にグルココルチコイド需要が増

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