疾患を疑うポイント
●古典型は新生児期から乳児期早期に発症しうる.
●先天性副腎皮質過形成症の代表である古典型21-水酸化酵素欠損症は新生児マス・スクリーニング対象疾患.ろ紙血17α-ヒドロキシプロゲステロン高値の際を疑う.
●副腎不全症状(体重増加不良あるいは体重減少,活気不良,色素沈着など)をきたしうる.
●46,XX個体における外陰部の男性化,46,XY個体における外陰部の女性化をきたしうる.
学びのポイント
●先天性副腎皮質過形成症はコルチゾール産生低下をきたすことから,副腎不全をきたし,死に至る可能性のある疾患.
●新生児期に外陰部異常を有する先天性副腎皮質過形成症の法律上の性の決定はpsychosocial emergency.
●古典型21-水酸化酵素欠損症は新生児マス・スクリーニング対象疾患.
●治療の原則は不足する副腎皮質ステロイドホルモンの生涯補充.
▼定義
副腎におけるコレステロールからの副腎皮質ステロイドホルモン合成には,さまざまな蛋白質,酵素,補酵素が関与する(図7-36図).先天性副腎皮質過形成症はこれらのいずれかの異常でコルチゾール産生が低下し,代償性に下垂体前葉からACTHが過剰分泌され,副腎皮質過形成をきたす6疾患〔後述の表7-47図参照〕の総称である.6疾患はいずれも常染色体劣性遺伝病である.
▼病態
副腎皮質におけるコルチゾール産生過程(図7-36図)のいずれかの段階が障害され,コルチゾール分泌不全をきたす.代償性に下垂体前葉からACTHが過剰分泌されるため,副腎皮質は過形成となる.疾患により分泌低下および分泌過剰をきたすステロイドが異なるため,それぞれ特徴的な臨床症状・検査所見を示す.
▼疫学
わが国における発症頻度はおよそ15,000~20,000人に1人である.
▼分類
先天性副腎皮質過形成症は6疾患からなる(表7-47図).先天性副腎皮質過形成症のおよそ