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治療

【2】鉄欠乏性貧血
iron deficiency anemia
張替 秀郎
(東北大学大学院教授・血液免疫病学)

疾患を疑うポイント

●月経を有する女性に多い.

●小球性貧血を呈する.

学びのポイント

●貧血のなかで最も頻度が高い貧血であり,すべての領域の医師が診る貧血.

●原因となる基礎疾患は消化器疾患,婦人科疾患など多岐にわたる.

●月経や成長,運動,不十分な摂取など生理的な理由によっても発症しうる貧血.

▼定義

 ヘモグロビン合成に用いられる鉄が不足することにより発症する貧血.

▼病態

 われわれの体は,積極的に鉄を排出するシステムを有しておらず,体内で利用される鉄のほとんどは,寿命が来てマクロファージに取り込まれ処理された赤血球から取り出された鉄が再利用されたものである(図8-7).体内に排出される鉄は皮膚・粘膜の脱落や汗により自然に喪失される少量の鉄であり,その分を食事からの鉄で補っている.したがって,食事からの鉄補給のパイプは細く,出血などにより喪失が増えたり,成長や妊娠などにより需要が増えると,必要分が賄えず体内の鉄プールは減少し鉄欠乏となる.体内の鉄の約70%は赤血球のヘモグロビン合成に用いられていることから,鉄欠乏の影響を最も大きく受けるのは赤血球造血であり,鉄不足によりヘモグロビン合成が不十分となり貧血の発症に至る.

▼疫学

 月経を有する日本の女性の10~20%が鉄欠乏性貧血とされており,この層だけで200万~400万人の鉄欠乏性貧血症例が存在すると推測される.その他,妊婦の約20%が鉄欠乏性貧血を呈するとされており,消化管疾患や婦人科疾患,成長期の若年層などを含めると相当数の鉄欠乏性貧血が存在すると考えられる.

▼分類

 鉄欠乏性貧血の診断は共通であるが,原因としては,①摂取不足,②喪失(月経,病的出血),③需要の増大(妊娠,成長)に大きく分けられる.

▼診断

 息切れ,動悸,易疲労感,めまい,頭痛などの症状はほかの貧血と共通である.その他貧血以外の症状として,鉄不足による爪の菲薄化で生じる

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