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【3】鉄芽球性貧血
sideroblastic anemia
張替 秀郎
(東北大学大学院教授・血液免疫病学)

▼定義

 骨髄において赤芽球のうち15%に環状鉄芽球(ring sideroblast)を認める貧血である.環状鉄芽球は5個以上の鉄顆粒が核周囲の1/3以上にわたり分布する鉄芽球(図8-9)

▼病態

 赤芽球のミトコンドリアにおいて鉄の利用障害が起こると過剰鉄が沈着し鉄顆粒が形成され,鉄芽球として観察されるようになる.鉄芽球性貧血は上記のように多数の鉄顆粒が環状に分布した鉄芽球が認められる貧血である.貧血の原因として,ヘム合成不全や鉄沈着によるミトコンドリア機能異常や酸化ストレスなどによる赤血球造血の障害が考えられている.

▼疫学

 先天性鉄芽球性貧血はきわめて少なく,日本での症例数は100症例以下と推測される.日本における骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes;MDS)全体の有病率は約3人/10万人で,そのうちMDS with ring sideroblast(MDS-RS)は約5%と推測される.

▼分類

 鉄芽球性貧血は先天性と後天性に分けられる(表8-4).先天性鉄芽球性貧血は,ミトコンドリアにおける鉄利用にかかわる遺伝子,ミトコンドリア機能にかかわる遺伝子などの先天変異により発症する.後天性鉄芽球性貧血は,薬剤などによる二次性鉄芽球性貧血とMDSの1型として発症する鉄芽球性貧血(MDS-RS)からなる.

▼診断

 貧血がありかつ骨髄において環状鉄芽球が15%以上存在することにより診断する.ただし,近年MDS-RS症例の80%近くにSF3B1遺伝子の変異が認められることが明らかとなったことから,WHO2016の診断基準では,本遺伝子の変異が確認された場合は環状鉄芽球が5%以上認められればMDS-RSと診断してよいとされている.

▼治療

 先天性鉄芽球性貧血のうち,赤血球のヘム合成系の初発酵素である赤血球型アミノレブリン酸合成酵素の変異によるX連鎖性鉄芽球

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