診療支援
治療

【12】異常ヘモグロビン症
hemoglobinopathy
和田 秀穂
(川崎医科大学教授・血液内科学)

疾患を疑うポイント

●わが国でみられる異常Hb症は,約31%が症候性であり,溶血性貧血(症候性の52%),赤血球増加症(症候性の29%),チアノーゼ(症候性の11%)などの症候から疑うことができる.残りの約69%は無症候性バリアント.

学びのポイント

●国内の異常Hb症は210種類以上に及んでいる.そのうちHbAを形成するαグロビン鎖異常が31.9%で,βグロビン鎖異常が65.5%を占める.

●HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法によるHbA1c測定時において,異常Hbに由来するHbA1cはHb Aに由来する正常HbA1cと溶出位置が異なり,正常のHbA1c分画からはずれる.そのため,異常Hb症では異様なHbA1cの低下(時には上昇)がみられる.

▼定義

 Hb異常症のうちHbの量的異常をサラセミアといい,質的異常を異常Hb症という.異常Hb症のほとんどが遺伝性疾患であり,大部分(約90%)がDNAを構成している1個の塩基の変化による単一アミノ酸置換によって発症している.

▼病態

不安定ヘモグロビン症(unstable hemoglobin disease:UHD)

 異常Hb症のなかで最も頻度の高い不安定Hb症は,Hb分子の不安定性が軽度から超不安定なものまで幅広く存在している.Hb分子の不安定性により,Hbが赤血球内で変性・沈殿したHeinz(ハインツ)小体を形成し,赤血球崩壊の亢進による溶血性貧血を呈する.常染色体優性遺伝であり,慢性溶血や薬剤惹起性溶血をきたすのはヘテロ接合である点が特徴である.ホモ接合は致死的と考えられる.なお日本人にみられる不安定Hb症で代表的なのがHb Köln(ケルン)であり国内に広く発見されている.

鎌状赤血球症(sickle cell disease:Hb S症)

 Hb S症は,最もよく研究された異常Hb症であり,βグロビン遺伝子の6番目のアミノ酸であ

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