診療支援
治療

【13】サラセミア
thalassemia
和田 秀穂
(川崎医科大学教授・血液内科学)

疾患を疑うポイント

●わが国でみられるサラセミアの多くは軽症型であり,溶血症状はなく小球性赤血球症の所見のみである.よってMentzer Index(MCV/RBC)が著しく低下した小球性赤血球症をみたときにはサラセミアを疑う.

●小球性赤血球症を呈するために,しばしば鉄欠乏性貧血と誤診され,鉄剤不応性によってはじめて気づかされることも多い.

学びのポイント

●遺伝子型によりヘテロ接合あるいはホモ接合に,臨床症状により軽症型(minor),中間型(intermedia),重症型(major)に分けられる.

●わが国では,βサラセミアが約1,000人に1人,αサラセミアが約3,000人に1人であり頻度は意外に多い.その大部分が軽症型であるが,東南アジアなどからの人口流入により,症状を有する中間型,重症型が増加している.

▼定義

 血色素(ヘモグロビン:Hb)を構成する一方のグロビン鎖のみの産生低下によってα/β合成比がアンバランスとなるために引き起こされる遺伝性疾患で,重症の場合は溶血性貧血をきたす.αグロビン鎖の産生減少をαサラセミア,βグロビン鎖の場合をβサラセミアという.

▼病態

 健常人の骨髄中の赤芽球,網赤血球内ではαグロビン鎖と非αグロビン鎖がバランスよく産生されている.サラセミアは遺伝子DNAからグロビン鎖合成までの過程でのなんらかの異常により,特定のグロビン鎖の合成が選択的に抑制され,αグロビン鎖と非αグロビン鎖産生にアンバランスが生じた状態である.一般に臨床症状の出現はグロビン鎖の不均衡な産生による(図8-20)

αサラセミア

 HbAはα,βグロビンの2分子ずつを有したHb四量体(α2β2)である.αサラセミアでは,正常量に産生されたβグロビン鎖はαグロビン鎖パートナーを失い,蛋白分解を受ける.その結果,Hb四量体の量が減り,小球性赤血球症となる.それに加えβグロビン鎖の

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