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【14】慢性疾患に伴う貧血,腎性貧血
anemia of chronic disease(ACD),renal anemia
川端 浩
(金沢医科大学特任教授・血液免疫内科学)

▼定義

‍ 慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease:ACD)は関節リウマチなどの膠原病,慢性の感染症,Castleman(キャッスルマン)病などでみられる慢性の貧血の総称である.原因は複合的であるが,主に炎症に起因するため炎症性貧血(anemia of inflammation)ともよばれる.

‍ 腎性貧血慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)でみられる貧血で,腎臓におけるエリスロポエチン(erythropoietin:EPO)産生能の低下が主な原因である〔第9章も参照〕.

▼病態

ACD

 炎症性疾患では,炎症性サイトカインの1つであるインターロイキン6(interleukin 6,IL-6)によって肝臓における鉄代謝制御ホルモンのヘプシジンの産生が増加している.増加したヘプシジンは腸管およびマクロファージから赤血球造血系への鉄の供給を抑制する(鉄の利用障害).このため,ヘモグロビンの合成が滞り,ACDをきたす.

腎性貧血

 通常,貧血状態では,腎尿細管の間質に存在するEPO産生細胞への酸素供給量が減少し,低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor:HIF)2αの発現が増加する.HIF-2αはEPOの発現を増加させ,血中のEPO濃度を上昇させる.EPOは赤血球前駆細胞に働いて,赤血球造血を刺激する.CKDでは障害された腎尿細管における酸素消費量が減少するため,EPO産生細胞への酸素供給量が相対的に増加している.このため血清EPO濃度の上昇がみられず,骨髄における赤血球造血能が低下して腎性貧血をきたす(図8-22)

▼診断

 慢性疾患患者にみられる正~小球性・低色素性の貧血はACDを疑う.ACDでは血清フェリチン値の低下がみられず,血清CRPが増加している.

 CKD患者にみられる貧血で,血清EPO濃

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