▼定義
慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease:ACD)は関節リウマチなどの膠原病,慢性の感染症,Castleman(キャッスルマン)病などでみられる慢性の貧血の総称である.原因は複合的であるが,主に炎症に起因するため炎症性貧血(anemia of inflammation)ともよばれる.
腎性貧血は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)でみられる貧血で,腎臓におけるエリスロポエチン(erythropoietin:EPO)産生能の低下が主な原因である〔第9章→も参照〕.
▼病態
➊ACD
炎症性疾患では,炎症性サイトカインの1つであるインターロイキン6(interleukin 6,IL-6)によって肝臓における鉄代謝制御ホルモンのヘプシジンの産生が増加している.増加したヘプシジンは腸管およびマクロファージから赤血球造血系への鉄の供給を抑制する(鉄の利用障害).このため,ヘモグロビンの合成が滞り,ACDをきたす.
➋腎性貧血
通常,貧血状態では,腎尿細管の間質に存在するEPO産生細胞への酸素供給量が減少し,低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor:HIF)2αの発現が増加する.HIF-2αはEPOの発現を増加させ,血中のEPO濃度を上昇させる.EPOは赤血球前駆細胞に働いて,赤血球造血を刺激する.CKDでは障害された腎尿細管における酸素消費量が減少するため,EPO産生細胞への酸素供給量が相対的に増加している.このため血清EPO濃度の上昇がみられず,骨髄における赤血球造血能が低下して腎性貧血をきたす(図8-22図).
▼診断
慢性疾患患者にみられる正~小球性・低色素性の貧血はACDを疑う.ACDでは血清フェリチン値の低下がみられず,血清CRPが増加している.
CKD患者にみられる貧血で,血清EPO濃
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/3 腎性貧血
- 治療薬マニュアル2024/シアノコバラミン《シアノコバラミン》
- 治療薬マニュアル2023/メトトレキサート《メトジェクト リウマトレックス》
- 治療薬マニュアル2024/メトトレキサート《メトジェクト リウマトレックス》
- 治療薬マニュアル2024/メトトレキサート《メソトレキセート》
- 治療薬マニュアル2024/トシリズマブ(遺伝子組換え)《アクテムラ》
- 治療薬マニュアル2024/トシリズマブ(遺伝子組換え)《アクテムラ》
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/ヘモクロマトーシス
- 臨床検査データブック 2023-2024/ハプトグロビン〔Hp〕 [保] 132点
- 今日の治療指針2023年版/薬剤性貧血
- 臨床検査データブック 2023-2024/エリスロポエチン〔EPO〕 [保] 209点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/サラセミア(地中海貧血)
- 新臨床内科学 第10版/2 ヘモクロマトーシス
- 新臨床内科学 第10版/1 ヘモクロマトーシス
- 新臨床内科学 第10版/【10】酵素異常による遺伝性溶血性貧血