疾患を疑うポイント
●原因不明の血小板減少症.
●紫斑,鼻血,過多月経などを認める.
学びのポイント
●自己抗体による血小板寿命の短縮と巨核球の造血不全により血小板が減少する.
●小児例の多くは自然に治るが,成人例は慢性化する.
●脾臓摘出術により約7割の患者に根治を期待できる.
▼定義
血小板数が10万/μL以下に減少する原因不明の自己免疫疾患.免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia:ITP)ともよぶ.
▼病態
自己抗体により血小板の破壊が亢進する.巨核球造血の抑制による血小板の産生障害も認める.これにより血小板数が10万/μL以下に低下する.
▼疫学
国内の患者数は約24,000人.毎年約3,000人が発症.成人例では女性が男性よりも多い.5歳以下の小児,女性は30歳代,男性は高齢者に多い.
▼分類
血小板減少の診断時期により,新規診断例(0~3か月),移行期(3~12か月),慢性期(>12か月)に分類される.小児例の8割は発症から半年以内に自然に治る.一方,成人例の9割は慢性化する.
Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)感染,肝炎ウイルス感染,膠原病に合併する免疫性血小板減少を海外では二次性,基礎疾患がないものを特発性(原発性)に分類する.
▼診断
血小板数が10万/μL以下を示す症例のうち,明らかな原因がないものを,除外診断によりITPと診断する.60歳以上の高齢者では,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)との鑑別診断のため,骨髄検査を行うことが望ましい.
偽性血小板減少症,急性白血病,膠原病,ウイルス感染症,薬剤性血小板減少症などの鑑別診断も重要である.
▼治療
➊治療目標と原則
致命的な出血を回避するため,血小板数を3万/μL以上に維持すればよい.血小板数を正常化する必要はない.
➋治療を開
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