診療支援
治療

【2】ヘパリン起因性血小板減少症
heparin-induced thrombocytopenia(HIT)
宮川 義隆
(埼玉医科大学病院・総合診療内科(血液)教授)

疾患を疑うポイント

●ヘパリン治療中の血小板減少.

●血小板減少を伴う原因不明の血栓症.

学びのポイント

●ヘパリンと血小板第4因子(PF4)の複合体に対する自己抗体が原因.

●ヘパリン投与開始後5~10日で発症することが多い.

●静脈血栓と動脈血栓のいずれも起こりえる.

●HITを疑えばヘパリンを速やかに中止する.

●ヘパリン再投与は禁忌.

▼定義

 ヘパリン投与中の患者の一部に発症する血小板減少症.

▼病態

 ヘパリンと血小板第4因子の複合体に対する自己抗体が,血小板と血管内皮を刺激して血小板減少と血栓症を誘発する.

▼疫学

 正確な患者数は不明.ヘパリン投与患者の数%に合併する.

▼分類

 非免疫学的機序で発症するⅠ型は,軽症であり原則として無症状である.本項で扱う免疫学的機序で発症するⅡ型は,ヘパリンと血小板第4因子に対する自己抗体が原因であり,血栓症を合併して重篤化することがある.

▼診断

臨床的診断

 ヘパリン開始後5~10日に,血小板減少と血栓症を合併したら,HITを疑う.特に血小板数の50%を超える減少,ヘパリン投与開始後5~10日の血小板減少,血栓症の合併を認め,他に血小板減少の原因となりえる基礎疾患がなければ,HITを強く疑う.ヘパリン投与歴のある患者では,体内にHIT抗体が残存していれば,ヘパリン再投与の翌日発症もありえる.

 ヘパリンを大量に使う人工心肺を用いた手術,虚血性心疾患の患者,集中治療室,透析室で発生しやすい.内科病棟では,血管内留置カテーテルのヘパリンロックでも発症することに留意が必要である.

血清学的診断

 ヘパリンと血小板第4因子の複合体に対するHIT抗体をELISA法などで測定する.感度が高い検査ながら,特異度は低いため過剰診断につながりやすい.なお,HIT抗体が陰性ならば,HITである可能性は低い.血小板の活性化を調べる機能検査もあるが,保険適用外で普及していない

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