診療支援
治療

【5】播種性血管内凝固症候群
disseminated intravascular coagulation(DIC)
朝倉 英策
(金沢大学附属病院・病院臨床教授)

疾患を疑うポイント

●出血症状や臓器症状といった臨床症状出現後の診断では手遅れになる.

●血小板数低下(造血障害症例を除く),FDP上昇がみられれば,DICの可能性がある.

学びのポイント

●DICの診断は血液検査(血小板数,FDP,D-ダイマー,フィブリノゲン,PTなど)で行うが,より適切な治療選択のためには,TAT,PICなどで病型分類を行う.

●最も基本的な血液凝固検査であるPT,APTTのみでのDIC診断はまず不可能である.

▼定義

 基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし,細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態.凝固活性化とともに線溶活性化(血栓を溶解する機序)がみられるが,その程度は基礎疾患により相当な差違がみられる.進行すると血小板や凝固因子といった止血因子が低下し,消費性凝固障害の病態となる.DICの二大症状は,出血症状と臓器症状であるが,臨床症状が出現すると予後はきわめて不良となるため,臨床症状の出現がない時点で治療開始できるのが理想である(図8-25)

▼病態

‍ DICの基礎疾患は多く知られているが,そのなかでも急性白血病,固形癌,敗血症は三大基礎疾患である(表8-23)

 基礎疾患によりDICの発症機序は異なるが,多くの場合は直接的あるいは間接的に組織因子(tissue factor:TF)が重要な役割を演じている.

敗血症

‍ 敗血症などの重症感染症に合併したDICの発症にはサイトカインの関与が大きい.敗血症においては,リポ多糖やTNF,インターロイキン1(interleukin-1:IL-1)などの炎症性サイトカインの作用により,単球/マクロファージや血管内皮から大量のTFが産生され,著しい凝固活性化を生じる.さらに,リポ多糖やサイトカインは血管内皮上の抗凝固性蛋白であるトロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)の発現を抑制す

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?