疾患を疑うポイント
●脾腫を伴う血小板減少,ないし汎血球減少.
▼定義
脾腫を呈する疾患などでは,血小板が脾臓に蓄えられて,循環血液中の血小板数が低下する.このように,体内の血小板分布に異常をきたす疾患を,本項で扱う.
▼病態
健常人において,血小板全体の約1/3が脾臓に蓄えられている.脾腫があると,それが90%近くに及び,循環血液中の血小板数が減少する.しかし,脾機能亢進がなければ,血小板産生も寿命もほぼ正常であり,体全体の血小板量は正常と変わらない.このことは,脾摘後や外科的に門脈圧亢進を是正すると,血小板数がほぼ正常化することからもわかる.
脾機能亢進の場合は,血小板の破壊も亢進するところが単なる脾腫の場合と異なる.また,血小板のみならず,白血球や赤血球も破壊される.骨髄は一般的に代償性に過形成となる.
ただ,肝硬変に伴う血小板減少は,腫大した脾臓に血小板が貯留するだけでなく,肝臓でのトロンボポエチン産生低下による血小板造血能の低下にもよると考えられる.また,C型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患などでは,自己抗体による免疫性血小板減少を合併することも少なくない.
▼診断
CTスキャンやMRIなどの画像診断で,脾腫の大きさの正確な評価,基礎疾患を検索する.特に,MRIは,血流パターンや門脈や脾静脈の血栓の検出に有効である.
その他,基礎疾患に特異的な検査を行い,所見を評価する.
▼治療
➊血小板減少に対する治療
血小板減少に対して,血小板輸血は通常必要ない.血小板輸血を施行しても,90%程度が脾臓にプーリングされるため,血小板数はほとんど増加しない.
➋原疾患に対する治療
基本的には,原疾患に対する特異的な治療を行う.脾機能亢進には,脾摘術や部分的脾動脈塞栓術,門脈圧亢進症には,静脈瘤に対して外科的,内視鏡的治療を行う.
▼予後
原疾患によるが,一般的に血小板減少は比較的軽度で血小板減少
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