疾患を疑うポイント
●高齢者あるいは分娩後の女性に多い.
●今までに出血性素因がなく出血の家族歴もない成人が,突然広範で重篤な皮下・筋肉出血を発症する.
学びのポイント
●FⅧに対する自己抗体が出現し,突然重篤な出血症状をきたす疾患である.
●診断後,ただちにインヒビター消失目的のために免疫抑制療法を開始し,重篤な出血症状がある場合はバイパス製剤による止血療法を併用する.
●予後は良好ではなく,1/4が出血死,あるいは免疫抑制療法に起因する感染症で死亡する.
▼定義
血液凝固第Ⅷ因子(FⅧ)に対する自己抗体が出現し,その結果第Ⅷ因子活性の低下をきたし後天的に出血症状を発症する疾患である.
▼病態
FⅧに対する自己抗体の発生機序はいまだ不明な点が多いが,基礎疾患により免疫機構の破綻をきたすためと考えられている.基礎疾患としては,自己免疫性疾患,悪性腫瘍,妊娠・分娩などが頻度の高い疾患であり,薬剤の報告もある.また,本症は高齢者の発症も多いことから,加齢も要因の1つと考えられる.一方で,基礎疾患が明らかでない特発症例も少なからず認められる.
▼疫学
本症はまれな疾患であり,正確な発症頻度は不明である.2001~2003年に英国で実施された調査によると1.48人/100万人/年と報告されているが,最近増加傾向にある.わが国においても海外と同程度の発生数1~2人/100万人/年を示すものと推測される.
わが国での調査によると,性差は明らかではない(男女比1:0.9).発症年齢は,50歳以上が90%近くを占め,小児期の発症はまれである.分娩後発症に関連する女性を中心とした20~30歳代のピークと60~80歳代の二峰性のピークを示す.
▼診断
診断手順としては,高齢者あるいは分娩後の女性に原因不明の出血症状を認めたらまず本疾患を疑い,凝血学的検査を実施していく.
➊臨床症状
今までに出血性素因がなく出血の
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