診療支援
治療

【5】フォン・ヴィレブランド病
von Willebrand disease(VWD)
志田 泰明
(奈良県立医科大学・小児科)
嶋 緑倫
(奈良県立医科大学教授・小児科)

疾患を疑うポイント

●止血困難な皮膚粘膜出血(特に鼻出血や過多月経)がある.

●出血傾向の家族歴がある.

●スクリーニングの凝血学的検査でPT正常,軽度のAPTT延長,軽度のFⅧ:Cの低下,出血時間延長を呈した際に本症を考慮する.

学びのポイント

●最も頻度が高い出血性疾患.

●診断にはVWF検査(抗原,活性,マルチマー構造)が必要.

●治療はデスモプレシンやコンファクトの投与が中心となる.

●血液型O型のヒトのVWFはほかの血液型に比して約30%低値であるため本病型との鑑別が必要.

▼定義

 von Willebrand(フォン・ヴィレブランド)因子(von Willebrand factor:VWF)が量的あるいは質的に欠損することで,出血症状を呈する疾患群.

▼病態

 VWFはコラーゲン,血小板,血液凝固第Ⅷ因子(factorⅧ:FⅧ)に結合する部位をもつ分子量約25万の各分子(モノマー)が多数連なった高分子重合体(マルチマー)である.VWFの生理的活性は高分子マルチマーに依存する(図8-40).折りたたまれているマルチマーは血流によって展開して血小板粘着を促進するため,血流が速い部位でより働く特徴をもつ.このためVWDでは特に血流が速い部位(動脈系血管や毛細血管)での血小板粘着凝集能が低下する.

 また,VWFはFⅧに結合してFⅧ/VWF複合体のかたちで血液中に存在し,FⅧを分解から保護している.このためVWDではFⅧの低下も併発し凝固障害もきたす.

▼疫学

 von Willebrand病(VWD)は最も頻度の高い出血性疾患である.わが国では厚生労働省委託研究である血液凝固異常症全国調査の平成30年度報告書によれば患者総数は1,325人である.ランダムなスクリーニング検査によれば,軽症も含めると人口の1%にものぼると報告されているため,出血症状が軽度で来院していないVWDが多数存在すると想

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