▼定義
血友病,von Willebrand(フォン・ヴィレブランド)病以外の先天性凝固因子欠乏症はきわめてまれであり,血友病類縁疾患,rare coagulation disorders(RCD)などと総称される.凝固因子活性が一定値以下である量的異常(凝固因子欠乏症)に加えて,抗原と活性に乖離を認める質的異常(凝固因子異常症)も本項に含む.フィブリノゲン,プロトロンビン,第Ⅴ因子(FⅤ),FⅦ,FⅩ,FⅪ,FⅩⅢ欠乏症は出血症状を呈するが,FⅫ欠乏症は出血症状を呈さず治療は不要である.わが国RCDの疾患別患者数を表8-28図に示す.原因は各凝固因子の責任遺伝子内の遺伝子変異にあるが,翻訳後処理過程に重要な蛋白の遺伝子変異でも生じうる(FⅤ-FⅧ欠乏症).RCDのほとんどが常染色体劣性遺伝形式を示す.
▼病態
皮膚粘膜・軟部組織・関節出血,月経過多,外傷・手術時の異常出血をきたすものが多い.FⅦ欠乏症,FⅪ欠乏症では無症候性も少なくない.頭蓋内出血はほとんどのRCDで起こりうるが,FⅪ欠乏症ではきわめてまれである.
▼診断
繰り返す異常出血やスクリーニング検査が発見の契機となる.病歴・家族歴などを詳細に聴取し,PTやAPTTなどの検査結果から欠乏因子を推定し凝固因子活性と抗原量を測定する.抗リン脂質抗体症候群や後天性凝固因子インヒビターが否定できない場合は,正常血漿との混合試験によって鑑別する.確定診断のために遺伝子検査を要することがある.
▼治療
出血・観血的処置などの際に血液凝固因子製剤や新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)による補充療法が行われる.プロトンビン複合体製剤にはプロトロンビン,FⅦ,FⅨ,FⅩが含まれており,これらの凝固因子欠乏症患者で用いられている.FFPは治療的投与(出血時,観血的処置前)を目的とし,血漿分画製剤や代替医薬品(リコ
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