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治療

【3】活性化プロテインCレジスタンス
activated protein C(APC) resistance
大森 司
(自治医科大学教授・病態生化学)

疾患を疑うポイント

●欧米人で家族歴のある血栓症,若年での血栓症に遭遇したらAPCレジスタンスを疑う.

学びのポイント

●APCレジスタンスはFⅤの遺伝子異常によって,APCによるFⅤaの分解ができなくなる病態.

●APCレジスタンスはFⅤのLeiden変異が主.

●欧米人の血栓性素因としては最も多いが,日本人にはまれ.

▼定義

‍ 活性化プロテインC(activated protein C:APC)レジスタンスは,凝固第Ⅴ因子(FⅤ)の遺伝子変異による先天性血栓性素因である.FⅤ Leiden(ライデン)ともよばれる変異(FⅤのR506Q変異)が大部分を占める.

▼病態

 血栓部位に生じたトロンビンが,血管内皮細胞上のトロンボモジュリンと結合し,プロテインCを活性化する.APCは,活性化第Ⅴ因子(FⅤa)と活性化第Ⅷ因子を分解する.FⅤの遺伝子変異によりFⅤaがAPCで分解されず,凝固因子カスケードのブレーキがきかずに血栓傾向になる.FⅤは肝臓でつくられる補酵素となる凝固因子で,不活性型で血中を循環している.血液凝固の進行に伴い活性型となって,活性化第Ⅹ因子(FⅩa)とプロトロンビンを血小板膜上で結合させ,効率よくトロンビン産生を引き起こす.FⅤaの存在でFⅩaによるトロンビン産生は何万倍にも増幅される.

▼疫学

 Leiden変異は欧米で最も多い血栓性素因で,アレルをもつ頻度は白人の4~5%に及ぶ.多くがヘテロ接合体であり,ホモ接合体は1%程度である.すべての患者が血栓症を合併するわけではない(全体の5%程度).一方,日本人,中国人,アフリカ系黒人には,Leiden変異は報告されていない.

▼分類

 Leiden変異以外のまれな変異として,Cambridge(ケンブリッジ:R306T),Nara(ナラ:W1920R),Liverpool(リバプール:I359T),Bonn(ボン:A512V)があ

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