疾患を疑うポイント
●若年~高齢者の原因不明の動静脈血栓症.
●原因不明の習慣流産などの妊娠合併症.
●出血症状のない原因不明の血小板減少やAPTT延長症例.
学びのポイント
●免疫機序による代表的な後天性血栓性素因.
●血中にaPLが12週間以上持続して検出され,動静脈血栓や妊娠合併症の臨床症状を認めた場合にAPSと診断する.
●aPL関連症状は多彩で多くの診療科にまたがる.
●APS病態の発症機序は明確ではなく,治療は抗血栓療法が主体となる.
▼定義
血中に抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody:aPL)が検出され,動静脈血栓症および妊娠合併症などの臨床症状を有する疾患群.
▼病態
APSに関与するaPLは,β2-グリコプロテインⅠ(β2-glycoproteinⅠ:β2GPⅠ)やプロトロンビンなどのリン脂質結合蛋白とリン脂質の複合体を認識する自己抗体であり(図8-47図),梅毒などの感染症で検出されるリン脂質に対する自己抗体とは異なる.自己免疫によるaPL産生機序やAPS臨床症状の発症原因は明らかではない.
▼疫学
患者は10歳代から80歳代まで各年齢層に及び,平均発症年齢は30~40歳前後である.男女比は1~2:8~9とされている.わが国の推定APS患者数は1万~2万人とされている.
▼分類
➊原発性APS(primary APS:PAPS)
基礎疾患なくaPLが検出されAPS症状をきたす.難病に指定されている.
➋続発性APS(secondary APS:SAPS)
膠原病などを基礎疾患としてaPLが検出されAPS症状をきたす.基礎疾患では全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)が最も多い.
➌劇症型APS(catastrophic APS:CAPS)
aPL陽性者が全身の広範囲な血栓症を起こし,短期間に腎臓障害を含
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