診療支援
治療

【8】骨髄異形成症候群
myelodysplastic syndromes(MDS)
南 陽介
(国立がん研究センター東病院・血液腫瘍科科長)

疾患を疑うポイント

●緩徐に進行し,主に高齢者の血球減少で本症を疑う.

●症状のあらわれ方は患者によって異なる.具体的には,赤血球減少による顔色不良,全身倦怠感,動悸,息切れなどの症状や,血小板減少による皮膚・粘膜の点状出血や鼻出血など.

●白血球の1つである好中球の減少や機能低下により感染症にかかりやすくなり,発熱などを伴うことがある.

学びのポイント

●高リスクMDSの治療選択は,アザシチジン治療,併用化学療法,同種移植.MDS患者に治癒をもたらすものは同種移植のみ.

●症状経過や予後は症例ごとに大きく異なるため,予後予測が重要.

▼定義

 造血幹細胞に生じた遺伝子異常により,造血系が異常クローンに置換される疾患.無効造血のため,末梢血は血球減少傾向,血球の異形成,AML進展のリスク増加を特徴とする.赤血球,血小板,白血球がそれぞれ成熟する3系統の過程に同時に異常が発生する場合だけでなく,まずそれぞれの過程に異常が生じて,次第に3系統へと進行していく場合もある.1つの病気ではなく,複数の似たような病気の集まりととらえられているため,症候群(syndromes)とよばれる.

▼病態

 MDSは,ゲノム遺伝子異常をもつ造血幹細胞レベルのクローン性造血器腫瘍であり,血球の形態異常を特徴とする.ゲノム遺伝子異常のほかにも,免疫系や炎症性サイトカイン異常の存在,シグナル伝達異常の問題など幅広い異常が指摘されている.

 AMLへ移行しやすく,造血幹細胞移植が根治的治療だが,高齢者に発症が多いため適応は限られている.

▼疫学

 65歳以上の高齢者が多い.社会の高齢化とともに患者数は増加傾向である.

▼分類

 MDSは不均一な疾患群から構成されており,さまざまな病型がある.FAB分類,WHO分類(WHO2017)いずれもが使用されている.

▼診断

 診断には骨髄検査が必須で,典型例では骨髄の過形成と血球形態の異形成が

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