診療支援
治療

【14】本態性血小板血症
essential thrombocythemia(ET)
幣 光太郎
(宮崎大学・内科学(消化器血液学))

疾患を疑うポイント

●発症年齢のピークは60歳代だが,10歳代から発症がみられ,女性に多い.半数の症例で微小循環障害・血栓・出血に伴う症状がみられる.

●血小板と巨核球の増加を認めるが,脾腫や骨髄の線維化はまれである.

学びのポイント

●TPO受容体シグナルが遺伝子変異により活性化し,腫瘍性の巨核球,血小板増多がみられる.

●治療目標は血栓症リスクの低減である.

▼定義

 造血幹細胞レベルの異常により主に巨核球,血小板の増加をきたす腫瘍性疾患である.慢性骨髄性白血病,真性赤血球増加症,原発性骨髄線維症とともに骨髄増殖性腫瘍に分類される.9割弱の症例にJAK2CALRMPL遺伝子変異のいずれかが認められる.

▼病態

 ETでは患者の60%にJAK2 V617F(617番目のバリン→フェニルアラニン)変異,20~25%にCALR変異,3%にMPL W515L/K(515番目のトリプトファン→ロイシンまたはリジン)変異を認め,9割弱の症例にいずれかの変異が生じている.JAK2はトロンボポエチン(thrombopoietin:TPO)受容体のシグナル伝達を担う分子,MPLはTPO受容体そのものでありいずれも変異により活性化される.また,変異したCALR蛋白はMPLと結合しMPLを活性化する.つまり,ETにおける巨核球,血小板増加の原因は遺伝子変異によるTPO受容体シグナルの異常活性化である.JAK2V617F変異は真性赤血球増加症(polycythemia vera:PV)や原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF)でも,MPLW515L/K変異はPMFでもみられる.同じ変異が異なる病態を示す理由は,変異蛋白の発現量の違いや併存するほかの遺伝子変異の影響と考えられている.

 半数の患者は診断時無症状であり偶然発見される.残り半数の患者では,肢端紅痛症,頭痛,めまいなどの

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