疾患を疑うポイント
●骨髄の線維化に伴い貧血が出現し,代償的に造血の場となる脾臓は高度に腫大し腹満感が自覚される.骨髄検査では吸引採取不能(dry tap)が多く,末梢血では白赤芽球症や涙滴赤血球を認める.
学びのポイント
●PMFでは,遺伝子変異によるTPO受容体シグナルの活性化により巨核球が腫瘍性に増加する.
●PMFの脾腫と全身症状にはJAK2阻害薬が有効であり,高リスク患者の予後を改善する.
▼定義
骨髄線維症は,骨髄に線維芽細胞の増生とコラーゲン線維の沈着をみる疾患である.原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF)と,PMFを除く造血器腫瘍,固形腫瘍,感染症などに起因する二次性骨髄線維症とがある.
PMFでは造血幹細胞に生じた遺伝子変異により巨核球,顆粒球が増加する.骨髄線維化の進行は高度の肝脾腫,白赤芽球症をもたらす.9割弱の症例にJAK2,CALR,MPL変異のいずれかを認める.
▼病態
以下主にPMFについて述べる.PMFは慢性骨髄性白血病,真性赤血球増加症(polycythemia vera:PV),本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)とともに骨髄増殖性腫瘍に分類される.患者の60%にJAK2 V617F変異,20~25%にCALR変異,10%にMPLW515L/K変異を認め,約9割の症例にいずれかの変異を認める.これらはいずれもトロンボポエチン(TPO)受容体シグナルの活性化をもたらし巨核球増加の原因である〔本章「本態性血小板血症」の項(→)参照〕.JAK2変異はPVとETでも,MPL,CALR変異はETでもみられる.同じ変異が異なる病態を示す理由は,変異蛋白の発現量の違いや併存するほかの変異の影響と考えられている.
骨髄の線維化は,巨核球が産生するTGFβなどのサイトカインに反応し,骨髄間質でコラ
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