診療支援
治療

【19】皮膚T細胞リンパ腫
cutaneous T-cell lymphoma(CTCL)
山口 素子
(三重大学医学部附属病院・血液内科講師)

▼定義

 T細胞に由来し,皮膚に病変の首座をみる悪性リンパ腫の総称である.皮膚リンパ腫の8割以上を占め,代表的な病型として菌状息肉症(mycosis fungoides)がある.

▼病態

 病型によりさまざまである.皮膚T細胞リンパ腫全体に共通し,皮膚ないし皮下に腫瘍細胞の浸潤を認め,浸潤局面もしくは腫瘤形成をみる.

 菌状息肉症では,約7割の患者で皮膚の限局性病変として診断され,典型例では落屑性紅斑を臀部から下肢に認める.病勢の進行は数十年にわたりきわめて緩やかであるが,次第に病変の増大による腫瘤形成あるいは内臓浸潤を生じる.全身に紅斑を認める紅皮症とよばれる状態となることがある.

▼疫学

 皮膚T細胞リンパ腫全体で,わが国では年間280人以上が発症するとされる.大半が菌状息肉症であり,その他の病型はきわめてまれである.男性に多く発症し,成人および高齢者に多い.

▼分類

 多数のまれな疾患の集合体であり,WHO分類では菌状息肉症,Sézary症候群,原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫,皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫などが相当する.これらのうち,菌状息肉症が全体の過半数を占める.

 菌状息肉症は,表皮向性(表皮内への腫瘍細胞浸潤)を示し,小型から中型で脳回様の核を有する腫瘍性T細胞の浸潤を特徴とする原発性皮膚T細胞リンパ腫である.

 Sézary(セザリー)症候群は,①紅皮症,②全身リンパ節腫脹,③皮膚・リンパ節・末梢血への脳回様の核をもつ腫瘍性T細胞(Sézary細胞)の浸潤,の三徴で定義される症候群である.

 菌状息肉症とSézary症候群は多くの共通した腫瘍細胞所見を示すものの,病態と細胞起源は異なり,おのおの独立した疾患とされている.

▼診断

 皮膚病変の肉眼所見など臨床像と病変部生検所見を合わせて総合的に行う.共通して,CD3などの汎T細胞マーカーが腫瘍細胞に陽性である.成人T細胞白血病リンパ腫

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