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治療

【21】多発性骨髄腫(形質細胞性骨髄腫)
multiple myeloma(MM), (plasma cell myeloma)
飯田 真介
(名古屋市立大学大学院教授・血液・腫瘍内科学)

疾患を疑うポイント

●中高年者が息切れ,動悸などの貧血症状と腰背部痛などの骨痛を訴え,血清蛋白高値である場合は本疾患を疑う.

●原因不明の多発性溶骨病変を認めた場合,急性の腎不全症状や高カルシウム血症を認めた場合の鑑別診断としても重要である.

学びのポイント

●多発性骨髄腫は治癒困難なB細胞腫瘍であるが,正確な診断を下せば,長期間の疾患コントロールが可能となった.

●CRAB症候を有する多発性骨髄腫患者のみが治療適応となる.

▼定義

 多発性骨髄腫(MM)は,Bリンパ球の終末分化段階にある形質芽細胞に由来する腫瘍性疾患である.単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を血清中や尿中で検出することが多い.

▼病態

 MMは,前癌病態である意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)から年1%の割合で進展する.MGUSの時期には,約半数例で染色体座14q32上の免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子と原癌遺伝子座の相互転座が認められる.原癌遺伝子としては11q13(CCND1),4p16.3(FGFR3/NSD2),16q23(c-MAF)などがある.残りの半数例では,奇数番染色体のトリソミーを伴い染色体数が48本以上の高二倍体となる.二次的な遺伝子異常として,N/K-RAS遺伝子やBRAF遺伝子などのRAS-RAF-MAPK経路の活性化変異,NF-κB経路の活性化変異,さらに癌抑制遺伝子であるTP53遺伝子やFAM46C遺伝子の欠失と不活化変異が病態進展に関与する.

 骨髄腫細胞の増殖の主座は骨髄にあり,貧血をはじめとした血球減少を示す.血清中M蛋白による過粘稠度症候群をきたすことがある.免疫グロブリンの軽鎖がTamm-Horsfall(タム-ホースフォール)蛋白と結合し尿細管腔に円柱を形成し

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