診療支援
治療

【22】マクログロブリン血症
Waldenström macroglobulinemia(WM)
飯田 真介
(名古屋市立大学大学院教授・血液・腫瘍内科学)

疾患を疑うポイント

●中高年の貧血患者で高IgM血症や過粘稠度症状を認めた場合に本疾患を疑う.

学びのポイント

●まれな疾患で治癒は望めないが,診断することにより長期の疾患コントロールが可能である.

●症候性WM患者のみが薬物療法の適応となる.

▼定義

 マクログロブリン血症は,成熟B細胞と形質細胞の中間分化段階にある腫瘍性リンパ球の骨髄浸潤と,単クローン性IgMの産生を特徴とするリンパ形質細胞性リンパ腫(lymphoplasmacytic lymphoma:LPL)である.スウェーデンのJan Gösta Waldenström博士が1944年に報告した疾患であり,Waldenström macroglobulinemia(WM)ともよばれる.

▼病態

 Toll(トール)様受容体の細胞内アダプター分子MYD88遺伝子の体細胞変異(L265P)を90%の頻度で認める.その結果,B細胞受容体の下流にあるブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton's tyrosine kinase:BTK)の活性化を介してNF-κB経路を活性化し,B細胞の細胞死を抑制し増殖を亢進させる.約30%の患者で,ケモカイン受容体CXCR4遺伝子の活性化変異が悪性化に関与する.

 骨髄浸潤により貧血や血小板減少をきたす.時に発熱などの全身症状を合併する.リンパ節腫脹や肝脾腫,中枢浸潤〔Bing-Neel(ビング-ニール)症候群〕症状を呈する.IgMは五量体を形成し,血清IgM増加による過粘稠度症候群(hyperviscosity syndrome)を示し,出血傾向,眼,神経,心血管症状を呈する.20%にクリオグロブリンを検出する.単クローン性IgMの組織沈着やアミロイドーシスを合併することもある.IgMが抗ミエリン関連糖蛋白(myelin-associated glycoprotein:MAG)抗体活性や抗糸球体基底膜(

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?